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2014年12月26日

『アカノイト』朝丘戻先生特別インタビュー

「アカノイト」WEB連載時、2014年12月26日に公開いたしました《朝丘戻先生特別インタビュー》です。




物語はいよいよ佳境へ――。
シャレード初のWEB連載「アカノイト」。
折り返し地点を迎えた今、朝丘戻先生に特別インタビュー!



(1)「アカノイト」は「吸血種」という人ならざる人々のお話ですが、着想のきっかけは?

 同性愛という禁忌のほかにさらなる障害を背負いながら支え合うふたりの、深みのある愛情、絆を描きたいと思ったことです。

 同性愛は「自分が異性なら」とか「結婚が許されていないから」などと、自分と世間的な常識に対しての苦悩がつきまとうのですが、
 『アカノイト』の吸血種たちは、自分が普通の人間ではないことにも、己と世間を見つめて懊悩したり覚悟したりしながら生きています。
 これはどちらの痛みも個の孤立という部分が共通しています。
 しかしその孤立、孤独は、当人が行動して視野を広げることで解消することもできるはずです。

 今作のふたりも、有理は深幸を、深幸は有理を見つけて、
 「自分の苦しみを理解してくれる人がいるんだ」「ひとりじゃないんだ」と次第に理解して救われ、無二の存在になっていきます。

 また一方で、「吸血種、普通ではない者」の存在を知った人間たちにも心の揺れと言いぶんがあり、
 吸血種も人間もどちらも特別ではなく、対等なんだという部分も描いたつもりです。

 同性愛も吸血種も、世間一般で「正しい」とされるものがあるから辛いわけで、
 物語にもその「正しい」ものが存在しなければ本当の孤立、孤独、痛みは描けません。
 その思いにも真摯に挑みました。

 現代ファンタジーはこうやって世界観をすこし大仰にすることで、
 普段書いているテーマをさらに掘りさげることができるのが利点だと思っているので、
 読者様にも彼らを一緒に見守っていただきつつ、幸福感を共有してもらえますようにと願っています。



(2)蒼井有理と犀賀深幸、朝丘先生にとってどんな二人ですか?

 有理は頑固で綺麗でたんぽぽみたいな人。
 深幸は憎しみと寂しさで氷みたいになっていた人。

 己の醜さを理解しているからこそ綺麗な人間、というのを書くべくいつも作品とむき合うのですが、
 今回も結果的に、わたしらしいふたりになったと思います。
 また新しく生まれた大事なふたりです。



(3)蒼井有理と犀賀深幸。現実にいたとしたら良好な友人関係を築けそうですか?

 …自信がないです。
 嫌われるだろうなと思います。



(4)今作のこだわり部分、いちおしシーンなどを教えてください(ネタバレにならない程度に!)。

 今作はとくに、両視点でそれぞれの心情に切りこむことに拘って執筆しました。

 もともと一人称を選んで書くのは、誰しもが自分の価値観、感覚、見えるもの、でしか世界に参加できない、という、
 もどかしさや、視野の狭さ、をそのまま小説にしたいからなのですが、
 今回はそれを主役ふたりで描くことで、同じ場所で同じ時間を共有しているのに、考えていること、想っていることが違う、あるいはぴったり合っている、というのを、
 読者様に俯瞰で感じていただきたいと思いました。

 有理は楽しんでいるけど、深幸は切ない。
 深幸は喜んでいるけど、有理は苦しい。
 でも読者様には、笑っている有理も、「幸せだ」と囁く深幸も、じつは泣きたいんじゃないかと察せられる、みたいに、
 文章にない部分まで細かく勘ぐれるお話になっているといいなと思います。

 あと両片想い同居が好きなので楽しく書きました。
 有理は目が見えないので、ふたりでお風呂に入っているときに深幸だけ見ている、でも片想い、というのもストイックでエロティックで好みです。

 いちおしなんて言うのはおこがましいような感じなのですけれども、
 後半にでてくる海の場面が、すべて読み終えたあとも読者様の心に残ってくれたならと祈っています。



(5)「アカノイト」を執筆されている時の朝丘先生、どんな感じですか?

 修行僧のよう。

 あといつものことですが、終わりたくない、けど終わらないと…と思っていました。



(6)毎月1/15日頃はどんな心情でいらっしゃるのでしょうか……?

 雑誌などで月二回だとお得感がありますが、ネット上の時間経過ははやいからweb連載は待ち時間がかなり長く感じられると思います。
 もし読んでくださっているかたがいるなら楽しんでいただけますように、と手を合わせて更新日を迎えます。

 自分でも読み返しているのですけど、Webの状態だと新たな発見もあって新鮮な気持ちでいます。
 執筆中は「未完成である」という頭で厳しい目で読み返していくから、
 客観視して物語を楽しむことができないのです。でもそれができている状態です。
 「ここの文章悩んだけどすんなりいってるな、悪くないな」と安堵したりもするし、
 「大幅に修正したくなったらどうしよう…」と怯えたりもしています。



(7)担当に言いたいことがあれば……(こ、小声で……)。

 たぶん直接言ったこともあるはずなのですが、
 担当さんはボーイズラブとしていい作品、ではなく、読み応えのある面白い作品はいい、と推す文学志向なかただと感じています。
 作家に優しい反面、危険な担当さんだとも思っていて、
 自分自身で己の無能さを自覚しておかなくてはこの優しさに応えられない、と緊張しています。
 とても恵まれた緊張感です。

 嬉しいな、といつも喜びに浸るのは、
 登場人物たちの名前を知ると小説を読む前から「受け、攻め」じゃなく、「有理、深幸」などときちんと名前で呼んで生かしてくださるところ。
 単なるキャラではなく人間として心に住まわせてくださったのだと感じ入ります。
 小説は読者様はもちろんのこと、出版社、担当さんと、挿絵を寄せてくださる絵描きさんへの贈りものだとも思っていて、
 読んだときまず読者と同じ心持ちで素直に楽しんでもらいたいと願っているので、
 「有理、深幸」と呼んで待っていてくださる担当さんには幸せな気持ちでお贈りすることができます。
 ただし、贈るまでに大変ご迷惑をおかけしているので、今後も勉強しながら成長していきます。

 前担当のGさんにも、今回のWeb連載のことも含めお世話になっています。ありがとうございます。
 担当さんから「Gのおかけで」とか「Gが考えてくれて」と聞くたびに、そよそよ届く愛情を感じています。
 いまも支えていただいていて、大変恐縮です。



(8)最後に、読者の皆様にメッセージをお願いいたします!

 2013年の夏に上梓した文庫のあと、作家として心境に変化がありました。
 それは書きたい物語や恋愛観ががらっと変化したというものではなくて、
 いままで正確に言葉にできなかったことを、自信を持って明確に伝えられるようになったというふうなものです。
 その後一作目の書きおろし作品が『アカノイト』になりました。

 「吸血種」や「血液」と聞くと抵抗を感じる読者様もいるかもしれませんが、
 基本的には、パウチ容器に入った血を、ソファーに並んで座って飲んでいる男ふたりの、
 日常系ほのぼの相思相愛物語で、
 読んでくださるかたの日々の癒やしになるように、と心をこめて執筆したお話です。

 身体から直接血を飲むのは、後半のセックスシーンのみになります。
 なのでご興味を抱いていただけましたらぜひ読んでやってください。
 作品をだすごとに一歩ずつ成長を感じていただけるよう、今後とも努力し続けていきます。



朝丘先生、ありがとうございました!
有理のこころに見えはじめた小さな変化、そして――。
次回は2015年1月15日更新予定です。お楽しみに!!(※)


※WEB連載は終了しております。
※現在『アカノイト』は、シャレード文庫としてお楽しみいただけます。