立ち読みコーナー
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 運命の恋はらいおんと。~意地っ張りオメガの理想の結婚~
  あとがき
 トライシクルに乗せられ沢木の家に運ばれる間ずっと、麗斗は彼の体に両手を巻きつけしがみついたまま離れなかった。
 一体どうしたんだ、とか、今は発情期なのか、とか、質問してくる沢木の声は聞こえていたが、意識は朦朧としてきて自分でも何を答えているのかわからなかった。ただ、とにかく早く人目につかないところに行きたい、強く両手で抱いてほしいという気持ちばかりが高まって、自分でも制御できなくなりつつあった。
 トライシクルから降ろされても自力で立つことができず、沢木に抱き上げられ首に抱きついた。しっかりと体を抱く力強い腕。逞しい胸。麗斗よりも高い体温が突発的なヒートをどんどん加速し、理性が本能に飲みこまれていくのがわかった。
 おそらく沢木の方も、今日麗斗が会いに来るとは思っていなかったのだろう。抑制剤の量がいつもより少ないのか、匂い立つようなフェロモンが麗斗の体を包んでくる。
「麗斗、大丈夫か? ……とりあえず横になって」
 ふわりとしたものの上に体を下ろされるが、沢木と離れたくなくて麗斗はそのままひしとしがみつく。
「嫌だっ」
「落ち着くんだ。薬は? 持ってるのか?」
「持ってない、そんなのいいっ」
 着ぐるみの胸に顔を埋め駄々っ子のように首を振る麗斗に、沢木の「困ったな……」というつぶやきが届く。
 自分は沢木を困らせているのだろうか。どうして沢木は、自分と同じように感じてくれないのだろうか。
 そう思ったらふいに悲しくなってきた。
「麗斗、医者に行こう。かかりつけの病院は?」
「医者なんか行かない! 沢木さんがなんとかして……っ」
「俺にはどうしてやることもできない。オメガの薬は持ってないんだ」
「薬じゃないよ馬鹿っ! 沢木さんが、俺に触って……だ、抱いてっ」
 あまりにも感じすぎ、いい加減つらすぎてポロポロ涙をこぼしながら、麗斗はつれない男の頭から無理矢理ライオンを脱がせ、首を引き寄せると顔をぶつけるようにして口づけた。
「こらっ、麗斗……んっ」
 体を引きはがされそうになるのを全力で拒み、ただ闇雲に唇を合わせる。
 セックスどころかキスだって初めてだ。どうしたら沢木もキスしたいと思ってくれるのかなんてまったくわからないけれど、とにかく離されたくない。