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 黄金の王子さま
あとがき
 黄金の王子さま

   《1》

 窓を閉じていても忍び込んでくるジトジトとした湿気が、書類をしんなりとさせている。
 梅雨の終わりかけというのは、梅雨前線からの最後の置き土産とばかりに雨の日が続く。
 降り始めて今日で四日になる長雨に、普段は憂鬱という言葉と縁のない緒方和樹も、さすがにうんざりとした気分になった。
「仕事なんて、かったるいなぁ」
 ついに社会人にあるまじき暴言を吐き捨てると、長い腕を真上に伸ばし、んー…と背中を反らせる。
 例えば、中年の腹が出た部長あたりが同じことをしようものなら、女子社員から「いい歳をして」とか「だるいのはあんただけじゃないのよ」と厳しい視線が飛ぶだろうが、見目のいいオトコマエは得だ。
 通りかかった女子社員が、
「緒方さん、高校生みたいですよ」
 クスクスと笑いながら足を止めた。
「コーヒーを滝れに行こうと思っているんですけど、緒方さんも飲みますか?」
 そして、緒方を見下ろして小さく首を傾げる。
 雑貨や衣類に食料品、食品に至るまで多岐にわたって輸入販売を手がけるサガミインターナショナルは、貿易業界で五指に入る大手企業だ。
 業務や出世に男女の格差はなきに等しく、OLはお茶係という制度が崩壊してから久しい。飲み物は自分が飲みたい時に、各自で…という無言の約束があるけれど、緒方は入社以来、一度も自ら給湯室に脚を運んだことがなかった。
「ありがとう。香澄ちゃんは気が利くなぁ」
 甘い声で礼を口にして、ニッコリと笑顔のオマケをつければ完璧だ。
 女子社員は、嬉々としてうなずいた。
「あ、神田さん。俺もいい?」
 緒方と机を並べる笹山の問いに、彼女は笑顔のまま言い放った。
「笹山さんは、自分でね」
「おいおい~……そりゃ差別だ」
 情けない顔で差別だと訴える笹山に、彼女は残酷な言葉を続ける。
「緒方さんのためなら、なんでもしてあげたくなっちゃいますけど…笹山さんは……ねぇ」
 そして、意味深に語尾を濁したまま廊下へ出て行った。
「男は顔じゃないぜぇ」
 取り残された笹山は、緒方の顔をまじまじと見ながらため息をつく。
「……甘いな。顔だろ、やっぱり」
 そうバッサリと切り捨てた緒方は、万人が認める整った顔立ちをしていた。
 切れ長の涼しげな目は見るものに知的な印象を与えている。スッと通った鼻筋に、少し厚めの唇。日独ハーフの母親譲りであるダークブラウンの髪は、脱色をしての色ではないので傷みのない艶やかなものだ。一八五センチに迫る長身は、かつてバレーボール日本代表だった父親の血だろう。
 機転の利く性格と回転の早い頭脳、それに加えて恵まれた容姿のおかげで、二八歳の今日まで挫折を知らずに生きてきた。
 当然、ベッドを共にする人間に不自由したことはない。低く甘い声で囁けば、どんなにガードの固い女も簡単に陥落した。
 モットーは、来るもの拒まず去るもの追わず。正確に数えたことはないけれど、関係を持った相手の数は三桁に達していても不思議ではない。
 スーツの胸ポケットに、コンビニでは売っていない自分サイズのコンドームを常備していることは、何故か社内に知れ渡っている。
 誰が言い出したのか、緒方が廊下を歩けば『歩く狸褻ブツ』。更に笑みを浮かべれば『フェロモン過多注意報』などと囁かれる。
「神様は不公平だ……」
 ケチのつけようのない端整な緒方の顔を眺め、笹山はガックリと肩を落とした。
「あ、そのセリフ聞き飽きた」
 そんな笹山に対し、緒方はけろりと傷口に塩を塗りこむような発言をした。
 文句を言いながらも、緒方と友人づき合いをしてくれる笹山は貴重な存在だ。往々にして、度を超したオトコマエは同性に敬遠されがちだが、緒方も例外ではない。
 緒方にとって笹山は、サガミインターナショナルに入社してやっと得た、友人と呼べる初めての存在なのだ。




「あーあ、俺みたいな顔も頭もイマイチな凡人は、せいぜい努力するしかないなぁ」
「はは…そうだな」
 軽く笑い飛ばしたけれど、笹山の温和な人柄を好む女子社員も多いことを、緒方は知っている。先ほどの神田にしても、緒方と具体的にどうにかなりたいわけではなさそうだ。緒方のこういった方面の勘は、外れたことがない。
 それよりも、緒方に話しかければ笹山と言葉を交わすきっかけができる…と思っての行動だろう。それが、肝心の本人には伝わっていないようだが。
「おまえみたいなのがいいって物好きも、世界のどこかにはいるさ」
「物好きとはなんだ。この円らな目が好きって女も、過去にはいたんだぞ」
 イスを回転させて、向かい合って言い合っていると、二人のあいだにカップホルダーに納まった紙コップのコーヒーが差し出された。
「私語、部長が睨んでますよ。どうぞ!」
「ありがと」
 カップホルダーを受け取った緒方に笑みを返し、神田は唇を尖らせた。
「笹山さん、コーヒーいるんでしょ? 早く受け取ってください」
「え、俺の?」
「ですよ! どうぞっ」
 目を丸くした笹山の手にカップホルダーを押しつけ、神田は再び廊下に出て行った。
「……緒方のついでか。ラッキー」
 笹山の鈍い反応に、緒方はうつむいて肩を震わせた。これじゃあモテないな、などと失礼なことを思いながら。
「緒方くん!」
 不意に部長の鋭い声が飛んでくる。あらら…と緒方は表情を引き締めた。
 私語を咎められたのだと思い、
「すみませーん。仕事に戻ります」
 顔だけ部長のデスクに向けて、軽く謝罪をする。
 けれど、部長の用件は私語の叱責ではなかったらしい。厳しい表情のまま、緒方を手招いている。
「……なんだ?」
 ぽつんとつぶやき、緒方は席を立った。
 均整のとれた長身を、チラチラと女子社員が盗み見ている視線を感じる。
 それが、主に胸ポケットあたりに集中しているように思えるのは、皆あの噂が事実か否か気になっているのだろう。
「はいはい、部長。なんですか?」
 飄々とした顔で部長のデスク前に立つと、そろそろ額が広くなってきた中年の部長は地を這うような低い声で言った。
「緒方くん、会長が君を呼んでいるんだが。なにをしたんだね」
 会長……? と、緒方は入社式で目にして以来縁のない姿を頭に思い浮かべた。
 目にしたと言っても、表情の判別もつかないほど離れていたので、思い浮かべるのは社史に載っている写真だ。
 創始者の長男である相模宗一郎は七十をとっくに過ぎている老人だが、未だに経営に係わっている名実ともにトップの権力者だ。実権を譲り渡したはずの四十半ばの息子には、まだまだ任せられない……ということだろう。
 その会長に、個人的に呼び出されるような心当たりは全くない。
「なにもしていないと思いますが」
 怪訝な顔で言葉を返した緒方は、ここしばらくの記憶を必死で探った。
 だがどんなに考えても、会長とは廊下ですれ違ったことさえない。
「まぁ…ともかく、会長室に行きたまえ。場所は分かるだろう?」
「分かりますよ。最上階ですよね」
 厳しい表情のままうなずいた部長は、早く行け…とばかりにホコリを払うような仕草で手を振った。
 緒方は、なんだろう…? と、首をひねりながらエレベーターホールへ向かった。



「失礼します。管理部の緒方です」
 会長室というプレートが掲げられているドアをノックしながら、よく通る声で名乗る。
 入れ、というしわがれた声での応えを確認して、緒方は重厚なドアを開いた。
「……お呼びだと伺いましたが」
 室内へ足を踏み入れながら入り口で頭を下げ、ゆっくりとその顔を上げた緒方は、「あ」の形に口を開いて硬直した。
 部屋にいたのは、社史のカラー写真で見たことのある会長と会長よりは馴染みのある社長、それともう一人……若い女性の姿があった。
 一週間ほど前、誘われて夕食を共にした受付嬢だ。
 自分から誘ってくるタイプにしては控え目で、おっとりとした性格とやわらかな笑顔が可愛いと思った。
 あの日は…フレンチレストランからバーに場所を移し、確か締めくくりはホテルだった。
 よくある、一度限りの後腐れないおつき合いだ。
「すみません、緒方さん」
 名前も忘れた受付嬢は、状況が呑み込めていない緒方にペコンと頭を下げた。
「亜理紗が頭を下げることはない! どうせ、この男がたぶらかしたんだろう」
 緒方のせいだと一方的に決めつけ、威圧的な声で老人が一喝した。
 たいていのことには動じない自信のある緒方が、反射的にピクッと眉を動かしてしまう迫力は、さすがの貫禄だ。
「違います、おじいさま。私がお誘いしたんです」
「なにを言うか。おまえが、そのようなふしだらな娘のわけがない! この男に騙されているに決まっとる!」
 会長と受付嬢、二人のやり取りを傍観していた緒方は、ぼんやりと状況が見えてきた。
 公にはなっていないけれど、彼女は会長の孫娘なのだろう。しかも、相当可愛がられていると推測できる。
 どこからどうバレたのか分からないが、緒方と関係を持ったことを知り、激怒している。
「専務から、亜理紗お嬢さんが男とホテルから出てきた……と聞かされた私の身になってみろ。ショック死するかと思ったわ!」
 どうやら、目撃者は専務らしい。
 顔を紅潮させて怒鳴る老人を眺め、緒方はのんびりと考えた。
 ……ショック死どころか、これだけ元気なら百まで生きるだろう…と。
「私だって、もう子供じゃない。男性とおつき合いすることだってあるわ!」
「それが問題ではない! 聞くところによればこの男、かなり素行が悪いらしいな。おい、なにが狙いだ? 亜理紗を騙して、社を乗っ取ろうとでも企んでいるのか?」
 いきなり飛躍した話になり、緒方は慌てて首を振った。
 亜理紗に手を出したことは事実なので言い逃れできないが、会社の乗っ取りを計画しているなどという、大それた誤解を容認するわけにはいかない。
「そんなこと、考えたこともありません。だいたい、お…私は、彼女が会長の身内だということも知らなかったんですから」
 緒方の言葉に、亜理紗は大きくうなずいた。
 自分のせいで緒方を巻き込んでしまったと、泣きそうな表情を浮かべている。
「亜理紗を傷物にした償いは、どうするつもりだ?」
 キズモノという言葉に、緒方は、時代錯誤だな……とため息をついた。
 そしてつい、余計な一言を口にしてしまう。
「キズモノって、あの。……まさか、彼女がこの歳まで未経験だったなんて、思ってないですよね……?」
 その瞬間、会長室内の空気が凍りついた。
 亜理紗は唇を噛んでうなだれ、会長の気迫に押し黙っていた社長は目を剥いている。
 会長に至っては、一度真っ青に血の気が引いた顔色が徐々に赤みを増し、最後は茄でたタコのような見事な色に変わった。
「あ……」
 失言を悟った緒方は、天井付近に視線をさ迷わせた。
 大半の女性には、子供みたいで可愛いと好評な緊張感のない飄々とした性格だが、時と場合によってはアダになる。
 今この瞬間、緒方はそれをひしひしと感じていた。
「で……っ、出て行けーっ! 貴様の処遇については、管理部の部長の方へ通達しておく!」
 バンッ! と。両手で、大きなオーク素材の机を叩きながらの会長の怒鳴り声が、鼓膜を震わせた。
「失礼しますっ」
 出て行けという言葉を幸いに、緒方は急いで会長室から退室した。
 大股で廊下を歩き、エレベーターの昇降ボタンを押して、ふぅ…と重い吐息をつく。
「マズったか。……クビかな」
 緊迫した言葉のはずなのに、緒方が口にしたら全くといっていいほど緊張感のないものになってしまう。
「……ま、いいか。そうなればそうなった時だ」
 緒方はのほほんとつぶやき、上がってきたエレベーターに乗り込んだ。



 会社近くにあるそば屋で、昼食をとりながら会長室での顛末を話すと、聞かされた笹山は持っていた割り箸をポロリと落とした。
 ころころ……テーブルの上に転がった箸を、向かいから手を伸ばした緒方が拾う。
「落ちたぞ」
 ほら、と差し出すと笹山は勢いよく掴み取った。
「おっまえ、なにのん気な顔をしてるんだ。それ、ヤバイだろっ!」
「ヤバイ。かなりヤバイ。本気でクビかもしれん。が、俺がここで慌てたところで、どうにもならないだろ」
 当事者である緒方自身より、よほど悲痛な顔をした笹山が、ガックリとうなだれた。
「その節操のない下半身をなんとかしないと、いつか命の危険にさらされるぞ。だいたい、今まで女に刺されなかったことがおかしいんだ」
 ぶつぶつと口にして、動揺を抑えるためか水の入ったグラスに手を伸ばした。
 緒方はマイペースを保ったまま、そばをすすった。
「んー…そういう思いつめるタイプって、無意識というか本能的に避けているみたいなんだ。今回は彼女というよりバックグラウンドがマズかった」
 緊張感のカケラもない態度に、一人でカリカリしていた笹山は特大のため息をついて箸を置いた。
 どうやら、食欲がどこかへいってしまったらしい。
「食わないのか? もらうぞ」
 半分近く残っているそばを覗き込み、緒方は丼を自分の方へ引き寄せた。
 笹山は呆れた顔で、よく食えるな……と唸るようにつぶやいた。
 コイツの神経は強化ファイバー製か。
 そばをすする緒方を眺めている細めた目が、そう語っている。
 チラリとそんな笹山に目を向けて、緒方はのんびりと口を開いた。
「悩んでもどうにもならんことは、考えない主義なんだ」
「……得な性格だな。うらやましい限りだ」
「おまえも、人のことで悩むなよ。ハゲるぞ」
 返す言葉を思いつかないのか、笹山は片手で顔を覆って肩を落とした。
 緒方が、損な性格だなぁ……などと考えていると知ったら、ますますどんよりとしていたに違いない。



 昼休みが終わり会社に戻った緒方を、ちょいちょいと部長が手招いた。
 ついにきたか。
「おや、お呼びだ」
 気楽に口にして笑みまでも浮かべた緒方に反し、笹山は「胃が痛ぇ…」とつぶやいてみぞおちに手を当てた。
「なんでしょう、部長」
 まさか、この場でクビを言い渡したりはしないだろう……。そう考えた緒方は、ニッコリと微笑んで部長の前に立った。
 異性に対してはイライラを落ち着かせる効果抜群のフェロモン攻撃も、当然のことながら部長には通用しない。
 A4サイズの紙をデスクに広げ、厳しい顔のまま緒方に視線を向けた。
「緒方くん。君は確か、ちょっと珍しい言葉ができたねぇ」
「はぁ」
 貿易会社ということで、当然のことながらサガミインターナショナルでは国際的な取引が頻繁に行われる。
 入社の条件として英会話は必須だが、第二、第三の言語も求められていた。
 社内には、アラビア語やポルトガル語、ロシア語などのあまりポピュラーではない言語を得意とする社員が複数存在する。
「私が使えるのは、フィンランド語とスウェーデン語、ロシア語の日常会話くらいですが…」
 フィンランド語とスウェーデン語は、学生時代に日本へ留学してきていた女性からベッドの中で習ったものだった。ロシア語は、大学の講師だった女性からだ。
 互いに自国の言語や文化を教え合う関係は、知的好奇心と快楽を満たす、まさに一石二鳥の関係だった。
 緒方の返事を聞いた途端、部長はニタリと不気味な笑みを顔面に張りつかせた。それを近距離で目撃した緒方は、思わずわずかに身体を引いてしまう。
「それだけできれば充分だ。というわけで、君に辞令が下っている」
 デスクにあった紙を突きつけられ、緒方はその紙面に目を走らせた。
 派遣先の国名欄には、『キルケ』の文字が。期間は一週間後から……?
「あの…派遣期間が、一週間後から空白になっているのですが」
「無事に契約を結ぶまで、だ」
 普段は無駄なほど楽天的な緒方も、思わず一瞬押し黙った。
 だいたい、聞いたこともない国名だ。
「……キルケって、どこなんですか?」
「バルト三国を知っているか?」
「知っていますよ。中学で習う世界地理じゃないですか。エストニア、ラトビア、リトアニァでしょう」
「だいたい、それとフィンランドの付近だ。北欧圏だな。首都では英語も通じるらしいが、公用語はフィンランド語だ」
 あまりにもアバウトな説明に、緒方はさすがに笑みを浮かべている余裕がなくなった。
 これは一種の島流しだろうか。クビになるより、タチが悪いかもしれない。
「金と、水晶などの良質な鉱物の産出国らしい。だが、外国人に対してガードが固くてな。一見、人当りのよさそうな…脳天気な君に白羽の矢が立ったというわけだ。重要な任務だ。しっかりと頼むぞ」
 部長はゆっくりと話しながら立ち上がる。不気味な笑みを張りつかせたまま、ポンと肉厚の手が緒方の肩を叩いた。
「最近はパワーストーンというのかね。水晶を用いたアクセサリー類が若い女性の間で人気らしいな。安価で質のいい水晶が安定して入手できれば、我が社がますます飛躍することは間違いなしだ。ついでに、金の方も手に入れられたら……なにをしたのか知らんが、今回の不始末は不問にするそうだ。特別ボーナスも出るらしいそ」
「なるほど……」
 目障りな緒方を飼い慣らしつつ国外へ追いやる、体のいい口実だ。
 緒方は嘆息して、整えてある髪をかき乱した。
「つまり私は、そのキルケだかに行って、水晶と…ついでに金の、我が社への輸出を確保するよう交渉すればいいのですね。が、契約を結べるまでは帰ってくるな……と」
「その通り。君がいなくなると、この部も平和に…いや、寂しくなるねぇ」
 寂しくなるという言葉の割に心の底から嬉しそうな笑みを浮かべ、バンバンと部長の手が緒方の背中を叩く。
 はは……。
 乾いた笑いが緒方の唇から漏れた。笑うしかない、とはまさしくこういう状況に使う言葉だろう。
「それ…私に拒否権は……」
「あると思うかね?」
「…ですよね」
 緒方に拒否権などはあるわけなく、諾々と従うしかなかった。
 辞令の記された書類を受け取り、振り向いた先には…大半の部員が仕事の手を止め、部長と緒方のやり取りに注視していた。
 緒方と目が合う前にぎこちなく視線を逸らし、各自の机上に顔を戻す。
 ふと顔を向けた先、情けない表情で緒方を見ている笹山に、思わず頬がゆるんだ。
 思えば自分が赴く国が、どんなところか知らなかったからこその余裕だろう……。
 キルケという小国に降り立った緒方は、己の脳天気さを初めて思い知ることになる。