立ち読みコーナー
目次
0ページ
 極上なご主人様
  あとがき
「こんな時間にどこに行くつもりだ」
「えっ? 友人の部屋に泊めてもらおうかと」
 三城の表情が曇った。そして「来い」と手招きする。
 やっと終わったと思ったのに…。まだ執事の仕事があるんだろうか。
 うんざりしながらも、僕はベッドで横になっている三城に近づいた。しかし言うとおりに目の前に立ったのに、怪訝(けげん)な顔をされてしまう。
「何をしてるんだ、さっさと入れ」
「えっ? 入れって」
 ベッドに?
 聞き間違いかと首を傾げたが、三城は羽布団を捲(めく)り上げ、ベッドを軽く叩いた。
 聞き間違いじゃないようだ。
 僕は慌てて首を横に振った。
「いっ、いいです。僕、寝相悪いし、いびきかくかもしれないし。魔王……副会長の安眠妨害になると困るから」
 ベッドを譲ってくれる気持ちは嬉しいが、寝る時まで「失格」なんて言われてはたまらない。
 しかし三城はそんな僕の不安を嘲笑うように唇の端を吊り上げた。
「何を勘違いしているんだ。私はベッドを貸すと言ってるわけじゃない」
「えっ?」
「入れと命令してるんだ。これからここで今日のお仕置きをしてやる」
「!」
 有無を言わさぬ三城の口調に思わず耳を疑ってしまった。
 お仕置きって…何? 特訓だけでもあんな嫌がらせを受けたのだ。お仕置きなんて何をされるかわかったものじゃない。
「えっ、遠慮します」
 僕はますます激しく首を横に振りながら、背を向けた。しかし腕を掴まれ、ベッドに引き寄せられてしまう。
「わっ!」
 凄い力だ。予想以上の引きに僕は背中からベッドに倒れ込んでしまった。
「っ!」
 すぐに起き上がろうとしたが、一瞬早く覆い被(かぶ)さられてしまう。
「なっ、何を…」
「お仕置きだと言っただろ?」
「!」
 落ち着いた、だが艶(つや)のある声色で言いながら、三城が僕を全身で押さえつけてきた。
 間接照明の仄(ほの)かなオレンジ色の明かりに照らされた顔が、僕をじっと見下ろしてくる。
 なんて綺麗な目だろう。黒曜石のような瞳は真っ直ぐで、力強くて…。瞳の中に映り込んだライトのオレンジ色の光が、まるで彼が隠し持つ猛々(たけだけ)しさを表しているかのようだ。見つめられると何もできなくなってしまう。
 少しはだけたバスローブから見える筋肉質な肩も男らしくて、それなのに妙に色っぽくて…。
 どうしたんだろう僕、なんだかドキドキしてきた。
 目の前にいる人は男で、あの魔王なのに顔が熱い。近づいてくる整った顔に、心臓が飛び出しそうなほど鼓動が速くなって…。
「?」
 唇に柔らかなものが触れた。一瞬何が起こったのかわからず首を傾げると、再び柔らかい三城の唇が僕のそれに触れてくる。
 キスされたのだ。
「な、なっ、なんでキス!」
 我に返って目を大きくした僕は三城の胸に手をあて引き離そうとした。しかしビクともしない。
「ちょっ、ちょっと、副会長っ!」
 バスローブを引っ張っても背中を叩いても三城はまるで無視だ。その間にも器用に僕のパジャマを脱がせようとしてくる。
「何脱がしてんですか。やめっ、やめろって!」
 これでは場所がベッドに変わっただけで昼間と同じだ。こんなの嫌がらせとしか…。
「!」
 はっとした。
 もしかして、抵抗したとたん「失格」と言うつもりだろうか。
 振り上げていた手を下ろし、体から力を抜くと、三城はどこか残念そうな顔をする。
「どうした? 抵抗しなくていいのか?」
「……」
 やっぱりそうだ。僕で遊んでる。
 むっとしたものの、言い返せば楽しませるだけだ。
 僕は落ち着こうと大きく息を吐いて、三城を見据えた。
「わかりました」
「なに?」
「するならさっさと終わらせてください。僕は早く寝たいんです」
「……」
 一瞬三城が驚いた顔をした。しかしすぐにククッ…と声を殺して笑い始める。
 変なことは言ってないのに、なんだろう嫌な感じだ。
「あっ、あの…。やっぱり今のはなしに」
 急に不安になって、僕は再び逃げようとした。しかし、また三城に覆い被さられてしまう。
 気のせいだろうか。先程よりも彼の顔が近い。それに魔王の目が雄々しく輝いて…。
「終わらせてください…か。お前の言うことを聞いてはお仕置きにならないが、仕方がない。お前の望みどおりにしてやろう」
「えっ、本当に?」
 珍しく優しい三城にほっとした。しかし次の瞬間、その場に凍りついてしまう。スルッ…と三城の手が脱げかけたパンツの中に忍び込んできたのだ。
「そっ、そこは」
 慌てて手を掴んだが遅かった。
「あっ!」
 長い指が僕の肉棒に絡みついてくる。
 柔らかかったそれがビクンと三城の掌(てのひら)の中で硬くなった。
 そんな僕の反応を楽しむように、三城がクスッ…と笑い声を漏らす。
「なかなかいい反応だ。それに小ぶりだが触り心地も悪くない」
「って…どこ触って言ってんです…か…」
「早く終わらせてくれと言ったのはお前だろ?」
「そっ、それは…」
 ただ服を脱がされるだけだと思ったのだ。これは冗談にしてもたちが悪すぎる。
「いいから手を……」
「ああ、今動かしてやる」
「違っ……」
 反論しようとした口を塞ぐように、三城はゆるゆると指を動かし始めた。
「やっ、やめっ……」
 こんなことされたらますます反応してしまう。
「やだっ…って…言ってるだろぉ…」
 僕は必死で掴んでいる手を引っ張った。しかし、三城はまるで無視だ。クチ、クチ、と卑猥(ひわい)な音を立てながら、長く形のいい指で僕の薄皮を扱(しご)いてくる。
「やっ、やめっ……んっ…あっ…あぁっ」
 なんでこんなに上手いんだろう。緩くなく、それでいてきつすぎない力加減は絶妙だ。抵抗したいのに、だんだん力が入らなくなってきた。
「はっ……やっ……やっ……やんっ……」
 キュッと強く締めつけられて、ますますゾクンとしてしまう。
「いやっ……ぁっ……んっ……はぁっ…」
 上に下に何度も擦(こす)られた僕の肉棒は、三城の手の中ですでに勃起(ぼつき)して、パンパンに膨らんでいた。
「やっ……やだっ……」
 こんなの嫌なのに、痴漢と変わらないのに…。どんどん体が熱くなっていく。
 このままだと恥ずかしいことになってしまいそうだ。
「くっ…そっ…」
 もう敬語とかお行儀とか構っていられない。
「このっ……変態っ…ん…離せっ……て」