立ち読みコーナー
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303ページ
You’re still by me
恋人たちの日常
 あとがき
 長い長い間、本当に気が遠くなるほど長い間、この腕に抱かれることを夢見ていた。二度と触れ合うことはないと諦めていたのに、この腕の強さを、肌のぬくもりを忘れられずに藻掻いていた。
「――顔を見られたくないから、悪いが目隠しをさせてもらう。君も、顔が見えない方が恋人を抱いている気分になれるだろう」
 言ってバスローブの紐を手にした彼に、篝は頷く。
「――あなたの好きなように。ミスター・ジョーカー…」
 そっと瞼を閉じる篝の後ろにまわり、沖田は彼の視線を隠すためにバスローブの紐を眼にあてる。きつく縛って前にまわり込み、
「見えるか…?」
 掠れた声で問うた。
「――何も…」
 首を振る彼の、隠された瞳にそっと指先で触れ、沖田はサングラスを外した。
 衣擦れの音が部屋に響く。服を脱ぎ落とした篝の腕に、細い指がかけられる。真っ暗な闇の中、彼に導かれながら篝はゆっくりとベッドに上がった。
 重なり合った胸から、あたたかな想いが身体中に流れ込んでくる。溢れるほどの想いが、堰を切って彼へと流れていく。こんなにも恋しいのに、こんなにも求めていたのに、どうして離れて生きられると思っていたのだろう。こんなにも愛されているのに、彼の愛が変わることなどあり得ないのに、どうして信じることができなかったのだろう……。
 額に触れる篝の唇。瞼への小さなキス。溢れる涙を舌先で拭われ、頬に押しあてられる唇の、深い口づけを求めて沖田は彼の頭を両腕に抱きしめる。
「――愛してる…」

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