立ち読みコーナー
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獣人王の側近が元サヤ婚を願いまして   7
あとがき                262
 驚いたような顔をしたガスタが私を近くで覗き込んでいた。ガスタ……そう、ガスタだ。目の前にいるのは虎ではなくて、黒い髪に黒い瞳の男。
「え……?」
 覆いかぶさる大きな体。
その身はなにも纏っていない。驚いて、それから自分の 格好に言葉をなくす。
 私も全裸だ。
「お前、なにを……?」
「あ、違う!これは体を温めて……!」
 体を、温めて?
「そんな言い訳」
「言い訳じゃない。ラインの体が氷のように冷たくてそれから熱くなって!火を焚くこともできないから少しでも温めようと思って」
 確かに私の体は冷えていた。それは認める。荷台に移動したところから記憶がないから……きっと意識を失ったのだろう。認めたくはないが、体調を崩したのだ。
「ライン」
 ぐっと顔が近づいて眉を寄せる。
「ライン、さっきのは本当か?」
「さっき?」
「愛してると言ってほしいと」
 どきりと心臓が跳ねた。
 確かに、そう言った。言ったがあれは夢の中の出来事のはずだ。ガスタが私にそんな言葉を言うはずない。
「夢じゃない」
 真剣な瞳にゆっくりと首を振る。
「ライン?」
「違う」
「なにがだ?」
「違う。私はそんな言葉、欲しくない」
「嘘だ!さっきは愛してるって言って抱きしめてほしいと!」
 ぐっと耳を塞いだ。
 ずっと求めていた言葉だ。私は確かにガスタにそうしてほしいと思っていた。
「今更……っ!」
 噛みつくように唇を塞がれた。やみくもに振り回す手を掴まれて、頭の上でひとつに纏められる。
 唇を割って入り込んでくる舌の熱さに眩暈がした。片手で私の動きを封じたまま、もう片方の手が肌を滑る。
 ああ、嫌だ。私はこの手が心地いい。心地いいと思うことが、辛い。
 私がガスタに愛を求めたからだろうか。
 夢うつつでも、そう言ってほしいと願ったから……。
 このまま抵抗しなければどうなるだろうか?
 ガスタはこの勢いのまま、私を抱くのか?
 抵抗しながら、心のどこかでそれを望む自分が浅ましくて泣きそうになる。
「ライン」
 熱を帯びた声にまるで時が戻ったような気がして……けれどそんなはずはないと首を振る。
「ライン」
 首筋をガスタの舌が這う。姿は人なのに、まるで虎のままのようだ。荒々しくて、自分勝手で……。
 するりと内股に入り込んできた手に体が跳ねる。ぐっと押さえつける力が強くなって……それを嬉しいと感じる自分に唇を噛んだ。
 膝裏に手がかかって大きく足を開かされる。押しつけられるガスタのものはすっかり固くなっていて、ざわざわと心が揺れる。
 腕を押さえられていて、よかった。
 抵抗できないようにされていてよかった。
 そうでなければ私はこの状態でみっともなくガスタに縋りついていたかもしれない。
 無理矢理抱かれようとしているのに、嬉しいと叫んでしまったかもしれない。
「……っ」
 ガスタの唇が心臓の上に落ちた。
 ひときわ大きくなった鼓動は気づかれなかっただろうか?