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獣医さんに押しかけ女房 ~ぽんぽこ花嫁修業~   7
あとがき                     185
「あ……僕、変じゃないですか?きちんと、人間に化けられて……る?」
 あんまり見られるものだから、もしかしてどこかおかしいのかと不安になった。
 尻尾……は、出ていない。耳も、きちんと人間のものだ。指にも獣毛は生えていないし、爪も伸びていない。
不安な思いで自分の身体を見下ろしていると、四ノ宮が大きく息をついた。
「そんな心配はしなくていい。少年と青年の狭間の、キレイな身体だと思っただけだ」
「キレイ……っていうのは、一騎さんのことです。目も髪も、僕と全然違う」
「瞳と髪の色が淡いのは、ばあさんが西欧の人間だからだ。煩わしいと思うことも多かったが、深森がキレイだって目をキラキラさせるなら……これも、いいか」
 四ノ宮を真似て、深森も四ノ宮が着ている服を剥ぎ取っていく。
 ただ、あまり器用ではない深森には小さなボタンを外す のは大変で、もたもたしてしまう。
 ようやく上半身を露にすることができたけれど、あと半分が残っている。
「そんなに困った顔をしなくても……クッ、自分で脱ごう」
 深森は途方に暮れた顔をしていたのか、肩を震わせた四ノ宮が自ら下肢に残る衣類を脱ぎ捨てた。
 やっぱり、四ノ宮のほうがずっとキレイだ。
「腕も、脚も長くて……胸や背中が、大きい。肩にもたれかかるのも、一騎さんにギュッとされるのも、大好きです」
 一歩、二歩……近づいて、背中に抱きつく。
 遮るものがないせいで、触れ合った肌のぬくもりがしっかり伝わってくる。頭を押しつけた胸元からは、心臓の鼓動が響いてきた。
「すごく、ホッとする。眠くなるくらい気持ちいい」
「……この状況で眠気を催すほどホッとされるのは、男の沽券に関わるな。お子様め……と思うのに、萎えない自分がちょっとばかり怖いぞ」
 苦笑を滲ませた声でそう言いながら、髪を撫でられる。深森は、一番引っかかった一言に反論した。
「もう子供ではないです」
「…………」
 無言で、笑われてしまった。
 それでも四ノ宮の手は離れていかなくて、こうしてくっついていてもいいのだと安堵する。
「もし、嫌なことをしたら言ってくれ。やめられるかどうかは、保証できないが……」
「一騎さんがするのに、嫌なことなんか一つもないです。なんでもいいから、どうにでもしてください」
 深森は四ノ宮に望むことを、思い浮かぶまま口にする。
 すると、四ノ宮は何故か眉を顰めて少しだけ怖い顔になった。
「言質を取ったからな」
 四ノ宮が言い終わると同時にふわっと身体が浮いた。あれ?と思う間もなく、寝床に下ろされる。
 肩を押されて寝転がり、その体勢で天井を背にした四ノ宮を見上げるのは、不思議な感じだった。
「身体中、全部……触るからな」
 大きな手が首筋を撫で、肩……腕、手の甲に触れてから胸元に移動する。
 くすぐったいような、それとは別の感覚のような……上手く言葉にできないけれど、これまでになく肌がざわつく。
「ぁ……触って、ほしいです。一騎さんの手、好き」
 ビクビクと勝手に身体が震えてしまう。それが、嫌がっているからではないと懸命に伝えた。
 狸の姿で、膝に乗せられて全身を撫でられた時も身体が熱くなってざわざわした。でも今は、あの時の何十倍も肌が騒いでいる。
 誰に見られても、誰に触られても……こんなふうになったことはない。四ノ宮だけの特別だ。
 深森の言葉に、四ノ宮はどこかが苦しいような声で返してくる。
「狸だって知ってるのに、な。男だってことがどうでもよくなるくらい、そっちのほうが問題なのに……こうして触っていると、狸だろうが妖怪だろうが可愛くて愛しくて、たまらなくなる」
 こうして……と言いながら、四ノ宮の手が腰骨を撫でて脚のあいだに差し入れられる。
 深森は、一際大きく身体を震わせた。
「っ、あ!ン……ぅ」
 大人になれば、繁殖に備えて身体の機能が成熟する。
 そのためどんな変化が起きるのか、どう対処すればいいのかも習っていて……知っているはずだった。
なのに、四ノ宮の手に引きずり出される熱は思考を麻痺させる。知識など無駄だとばかりに、深森を混乱の渦に巻き込む。
「ゃ、ぁ……あ、一騎さ……熱、い。指、なんか、汚しちゃ……ぁ」
 身体も、吐く息も……なにもかもが、熱い。
 触れられているところから濡れた音が聞こえてきて、四ノ宮の指を汚しているのではと心配になるのに、熱を抑え込むことができない。
 こんなの、知らない。怖い……のに、そう口にしたら四ノ宮が手を引いてしまうかもしれないから、ただひたすら身体の内側を巡る熱に耐える。
「出していいよ。ここ……ぬるぬるして、気持ちいいって教えてくれる」
「でも、で……も、待っ……て、待……っん!」
 泣きそうな声で、少しだけ待って……と訴えても、四ノ宮は深森の屹立に触れる指を離してくれなかった。
 少しだけ力を込めて握り込まれて、ビクッと腰を跳ね上げてしまう。