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里山ほっこり恋愛日和 ~銀狐とこじらせ花嫁~  7
あとがき                    253
「お前、いい男に育ったな。想像していたよりずっと……俺好みだ」
 銀黎は大きな手のひらで、紫央の華奢な両肩を掴んだ。
 痛くはない。でもきっと逃げられない。逃がしてくれない。そんな力だ。
「紫央……好きだ」
至近距離でうっとりと囁かれ、全身の力が抜けていく。ドクドクと鼓動がうるさい。
「はっ……なっ……」
 手を離せ。そう言いたいのに、酔ったように呂律が回らない。
「嫌だ。離したくない」
「嫌って、あっ、─んっ」
 いきなり唇を塞がれ、紫央は大きく目を見開いた。
「んっ……っ……」
 キスをされたのだと脳が理解するまでに、たっぷり十秒を要した。紫央は慌ててぎゅっと目を閉じる。少女漫画のヒロインたちはこういう時、十中八九目を閉じている。
 ─い、息は鼻で……するんだったよな。
 軽くパニックを起こしながらも取り乱さずに済んだのは、毎夜の〝勉強〟のおかげだ。しかし銀黎のキスは、紫央の想像の域を軽々と超えていく。
「……っ……んっ」
 分厚い舌が、遠慮の欠片もなく口内を蹂躙する。戸惑う紫央の舌を搦め捕ったかと思うと、つけ根が痛むほど強く吸い上げる。音のない部屋に、くちゅ、くちゅっと淫靡な水音が響く。
 ─これが、キス……。
 紫央の拙い想像はいつも、唇の先を啄み合う淡いキスで留まっていた。こんなぴちゃぴちゃと音がする、身体の奥が疼くような激しいキスは、紫央の妄想辞書には存在しない。
 もうごまかすことはできなかった。銀黎が好きだ。
 いつの間にか心の奥で巣食っていた恋を、認めるのと同時に銀黎が甘く囁く。
「紫央、好きだ……好きすぎて、ヤバイ」
 いつもの余裕はどこへ行ったのか、ひどく掠れた声だ。
 ─おれもお前が好きだ。ヤバイくらい。
 告げたい言葉までも、激しいキスに奪われる。歯列の裏側を舌先でいやらしく擽られたかと思うと、上顎の奥をざらざらと舐め回され、紫央はたまらず背中を反らせた。
「んっ……ふっ」
 甘くねだるような声を漏らすたび、キスが深まっていく。
「紫央……」
 その声の湿度に煽られ、身体の深い部分にイケナイものが集まってくる。濡れた唇から細い首筋、耳朶の産毛までも舐め回され下腹がずくんと重くなる。
 これ以上されたら、間違いなくキスだけで済まなくなる。
「銀……やっ、め……ろっ」