立ち読みコーナー
目次
226ページ
溺愛アルファに娶られたホテル王   7
溺愛アルファとお熱いバカンス    203
あとがき              219
 小野はゆっくりとネクタイのノットをゆるめるとシャツの前を開き、鎖骨にもキスを落としてくる。
「小野、さん……」
 うっすらと汗ばんだ肌が恥ずかしい。キスの延長戦上にしては艶めかしくて腰がもじもじしてしまう。
「おつらく、ないですか」
「……は、い」
 なにを指してつらくないかと訊かれているのか、正直なところ判別がつかない。こみ上げる欲がつらいのか、それとも触られている箇所が燃え立ちそうでつらいのか。どっちとも取れそうで、でも決められなくて、自分でも歯がゆくてしょうがない。いやならいやだと突き飛ばせばいい話なのだが、そうじゃないから困るのだ。
 続きを、してほしい。
 キス以上のことを。
 なにを求めているのかいまは自分自身でも冷静に判断できないが、小野だったらなぜか信じてもいい気がしていた。オメガで一流ホテルの総支配人という立場である以上、好奇の目で見られるのがつねだ。オメガごときがなぜトップの座に、と内心不満を抱えている重役陣がいることも知っている。
 周りは皆、敵だ。隙を見せたら容赦なく喉元を食い破られることを知っているから、入間は普段から神経を張り詰めさせていた。ぴんと張った絹糸のように。
 その糸をそっと震わせてきたのが、小野だ。
「……小野さん……僕は、オメガです。ショート型のヒートが来そうなんです。だから」
 だから放っておいてほしいと言いたいのか、めちゃくちゃにしてほしいとすがりたいのか。
 声に拒む意思が混じっていないことを聞き取った小野はひとつ頷き、胸にもくちづけてきてから、もう待ちきれないほどにガチガチになっている入間の前に手を置く。スラックス越しに大きな手を感じて、ん、と声が跳ねる。
 早く。はやく、はやくしてほしい。後からどんなに悔やむことになってもいいから、いまはとにかくこの衝動を弾けさせてほしい。
 無意識に潤みきった瞳を小野に向けていた。彼がぐっと喉奥で息を呑んでいることにも気づかず。
 どんな結末になろうとも、最初だけは番と交わりたい。それが自分だけの錯覚だとしても。
 じりっとジッパーを引き下ろした小野は中に手を忍び込ませてきて、入間の熱を握り締める。
「……硬くなってらっしゃいます」
「……ん、はい……」
 自分だけ痴態を晒すのはとてつもなく恥ずかしいが、数度扱かれたらすぐに達しそうだ。初めて感じる他人の手をもっと鮮やかに刻み込みたくて、入間は無我夢中で身体をしならせた。
「……は……ぁっ……」
 ヒートに見舞われたオメガがどれだけ淫らか、アルファの小野だったらよく知っているのだろうか。
「……こういうの……オメガの発情って……よく、見ます、か」
「いいえ。支配人が初めてです。私が触れていて気持ち悪くありませんか?」
「……いえ、いい、です……蕩け、そう……」
 身体に触れられれば触れられるほどこころがぐずぐずになっていく。さっきまで仕事の話をしていたのに、ベッドに組み敷かれ、下肢をあらわにされてしまえばこれ以上は抗えない。
「普段は、こんなんじゃ、ないんです、ほんとうに……いつもはちゃんと自制できます、でも……っあ、あ─ぁ……ッおの、さん……!」
 必死に言い訳している途中から悲鳴になったのは、小野が剥き出しになったペニスの根元を握り、くぷりと咥え込んできたからだ。
「だ、め、舐めるのは……っ」
 じゅっ、じゅるっと亀頭を吸い上げられて、あまりの心地よさに気が狂いそうだ。小野は裏筋にもためらいなく舌を這わせてきて、ずるぅっと下から上に向けて舐め上げていくと、くびれに口輪を引っかけてちゅぽちゅぽと舐めしゃぶる。
「や、や、だ、っま、って、待って、あ、あぁっ」
「私の口で達してくださいませんか。もう、はち切れそうです」
「ン─……!」
 ぐしゅぐしゅっと甘やかに扱かれてしまい、入間は一気に極みに押し上げられた。どくん、と脈打つ身体の奥からどろりとした塊のような熱がほとばしる。
「あっ、あっ……ッん─はぁ……っあ……っ」
 二十九年ぶんの精子。
 溜めに溜めた蜜を秘書である小野の口腔内に放ってしまった。
 びくびくとまだ震えるペニスを愛おしげに頬張り、小野は額に落ちた髪をぐいっとかき上げる。その浮き出した骨の強さに男らしさを感じ、胸がじわんと熱くなる。
 アルファの口の中でイくなんて。出しても出してもまだ出しきりたくて、腰の奥がうずうずする。
「おの、さん……小野さん……」
 乱れる胸中のままに身体を揺らすと、小野は深く息を吐き、入間から下着ごとスラックスを抜き取る。そうして入間をうつ伏せにさせ、丸く形よく盛り上がった尻を両手できゅっと揉み込んできた。