立ち読みコーナー
目次
250ページ
老舗にもいろいろありまして       7
あとがき                245
206ページ~
「もちろん、抱くとも」
 黒澤はほほ笑んでジェルを手に取った。
 しばらくいやらしいことをしていなかったせいで、春告の後ろも初めての時のように硬くなっている。黒澤は丁寧に時間をかけて拡げていくが、春告は早く中に欲しくて、焦れて半泣きになってしまった。
「なあ、もう、まだ?早、く、入れてよ……」
「春告くん、ここをこすられるのも好きだったろう?」
「好きだけどっ、中のほうが、気持ちいいんだよ……っ」
「ここだろう?」
「んっ……、いい……っ」
「指でも届くから。ここ、押してあげるから、もう少し緩めるまで我慢してくれないか」
「指、と、違うんだってっ。あんたの太いのでゴリゴリってっ、あ、やめ、いくっ」
 春告は黒澤の手をガシッと掴んだ。涙で潤んだ目で、色っぽく黒澤を睨む。
「俺に寸止めさせて楽しい!?」
「楽しい」
「やめる。もうやめる。あんたの指でいくくらいなら、自分の指でいくっ」
「本当に?」
 ニヤリと笑った黒澤は、自分の手から春告の手を引き剥がすと、その手を黒澤の猛りに導いた。春告の喉がゴクリと上下する。もう、と興奮でかすれた声で春告は言った。
「入れろって……」
 こんなふうにお願いされては、まだ駄目だ、とも言えない。黒澤は小さくうなずくと、春告の後ろから指を抜き、背中に腕を回して春告を起こした。
「春告くん、ベッドのふちに手を置いてくれるかな。腰はわたしが支えるから」
「バックですんの?黒澤さんの顔が見えなくて寂しいんだけど」
「申し訳ない。ただ、声が聞こえるならベッドのきしみも聞こえるのではないかな……」
「ああ、聞こえる……」
 上の階からは、声は聞こえないがあのギシギシ音ははっきり聞こえる。あの音を下の階の人に聞かせたくない。聞かされるほうはものすごく迷惑だからだ。納得してベッドから足を下ろし、マットの縁に手をついた。黒澤が枕を取って、春告の顔の下に置く。
「枕を抱えておくと楽だと思う」
「んー」
 言われたとおりにする。四つん這いではないが、なんだか動物になった気がして興奮した。黒澤の手が腰を掴み、待ちわびていた熱を孔に感じた。
「んん……」
 早く欲しくて腰を突き出してしまった。黒澤が笑った気配がして、春告を傷つけないようにゆっくりと侵入してきた。
「う……、あ、あ……」
 最初の限界まで拓かれる不快感を過ぎると、あとは快感を覚えている体が進んで黒澤を迎え入れる。実際は下腹の一部だけだが、圧迫感がすごくて体中を黒澤でいっぱいにされているような気になる。それがすごくいい。好きな男を食らっているという、倒錯的だが支配欲も満たされる。背中にキスを落としながら体が馴染むのを待っていた黒澤が、ゆっくりと腰を使い始めた。たちまち寒気のような快感が広がる。
「ああぁ……」
「……春告くん、声を抑えて」
「う、ん……」
 抱きしめている枕にギュッと顔を押しつけた。けれど黒澤が手加減なしで春告に快感を与え始めると、声を抑えようなどという理性はぶっちぎれた。