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そんなに俺を可愛がるな!~若頭はネコミミ!?~ 7
あとがき 239
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指でつまむと感触もはっきりとあり、しっとりした短く黒い毛並みはつるつるとして触り心地は悪くない。ただ、薄く平たいその部分は、他の場所よりも温度が低く、ひんやりとしている。
軽く引っ張ってみたが、自分の耳を引っ張るのとまったく同じような感じで、取れてくれる気配はなかった。
─なんだか、いつもより何倍も耳がよくなってる気がする。……四つもあれば当たり前か。
その耳に、遠くからドスドスと廊下を歩いてくる音がする。ひとつの足音はおそらく鶴海。もうひとつは。
「依織!どうした、まだ収まらねえのか」
言って、直茂だけが室内に入ってきた。布団にへたり込んでいる依織の隣に、寄り添うようにして座り、顔をのぞき込んでくる。
途端にフワッと、強烈な芳香が依織を包んだ。これは香水などの、人工的なものではない。直茂の発する、強烈なフェロモンだと依織は感じる。
「辛いか。どうして欲しい。言ってみろ」
ん?と優しい声でうながされ、依織の心に一瞬、反発したい気持ちが生まれる。対等でありたい、いつかこの男を越えたいという常日頃のライバル感情からだったが、それは長くはもたなかった。発情から来ているらしき生理的欲求があまりに強烈で、思わずその逞しい肩に縋りついてしまう。
「お、俺は。こんなこと、したくねえ。お前相手にみっともねえ、って思うんだけど」
はあ、と熱い吐息を漏らしながら、潤んだ瞳で依織は言う。
「駄目だ。どうにもならねえ。……助けてくれ。か、身体の中に、熱がこもって、おかしくなる……っ」
「……なあ、依織」
直茂は野良猫を怯えさせまいとしているかのように、慎重で丁寧に、しかし力強く依織を抱き寄せ、耳元で囁いてくる。
「こんなお前の辛いときに、つけ込むようなやり方は、俺は本来したくねえんだが。それでお前が楽になるなら……」
「な、直茂、俺。もう」
直茂の甘い低音が、頭の中に直接響くように聞こえている最中に、依織はもう、なにがなんだかわからなくなってしまっていた。
「い、いき、たい。出し、たいっ」
半泣きで言うと直茂は、がぱっと依織を布団に押し倒してきた。
「ん、んう、う」
唇が塞がれ、噛みつくようなくちづけが交わされる。厚く器用な舌が依織の怯えてすくんでいる舌を搦め捕り、きゅっときつく吸い上げてくる。
それだけでジン、と頭の奥が痺れ、全身がとろけてしまいそうだと依織は思う。
そうしながら直茂は、依織がまだ身に着けていたシャツをはぎ取り、下着に手をかけてくる。
─駄目だ。こんなにしちまったところを、直茂に見られるのは、やっぱりいやだ!
頭ではそう思う依織だったが、もうほとんど手足には力が入らない。
くちづけだけでとろとろにされてしまった依織から、直茂はあっという間に衣類をすべてはぎ取ると、改めて覆いかぶさってきた。
ふ、と猫耳に吐息がかけられると、びるびると大きく震える。うっとりしたように、直茂はその耳を愛し気に撫で、囁いた。
「耳も体温と同じように、熱くなってる」
「やめ……さ、わるなっ」
「依織。怖かったり、痛かったりしたら、すぐに言えよ」
「っあ……はあっ、あ……っ!」
直茂の唇が首筋から鎖骨に這い、それがどうしようもなく気持ちよくて、びくびくと依織の身体は反応する。
「直茂っ、あ、ああ、んっ」
その舌先が胸の突起を弄ったとき、ひときわ甘い声が、依織の濡れた唇から漏れた。
「そこ、やっ、ああ、いやっ、あ」
絶対にそんなところで男の自分が感じるわけがない、と思うのに、ぴくん、と跳ねてしまう身体が恥ずかしい。
「んっ、んん……っは、っあ!」
唇を噛んでみたが、すぐに耐え切れなくなり、細く高い声が出てしまう。
「なお、しげ。お、俺、もう」
涙交じりの声で訴えながら、依織は自分自身に触れようとした。その手を遮るようにして、直茂の手が熱の芯に触れてくる。
「ヒッ、あっ……!」
その途端、情けないほどに、あっという間に依織は達してしまったのだが。
「……すぐこんな、ガチガチになっちまうのか」
ぼそっと直茂がつぶやき、依織は羞恥と快楽で、全身がとろけたようになってしまっている。
力ない手で顔を覆い、はあはあと大きく胸を弾ませていると、ぐい、と大きく両足を割り開かれた。