立ち読みコーナー
目次
274ページ
月に棲む鬼              7
鬼の声                249
あとがき               266
 直人に優しくしごかれて、周は身悶えた。たちまち射精したくてたまらなくなる。それはもう自分ではどうにもならない衝動だった。性欲とか、本能とか、そういったものとは別次元の射精への渇望が周を襲う。怨念を浄化するたび、身体の中でたぎるような熱が生まれる。それをおさめる方法はただひとつ、何度も射精して熱を身体から吐き出す以外に、周には術がないのだ。
 だからいくら直人の手を拒もうとしても、身体は意に反して反応してしまうし、自分自身も狂気の渦に巻き込まれてしまう。
 のたうつように身体を捻った周の寝巻きの合わせが乱れると、あらわになった胸の突起を直人の唇がはさんだ。
 熱く濡れた舌が、突起を舐める。周は直人の身体を押しのけようと足掻いたが、力が入らない。
 胸を責め、一方で直人の手は周の屹立を握ってしごきながら、親指で先端の濡れた部分を撫で回す。ぬるぬると滑る直人の指が、否が応にも自身の興奮を伝えてくる。とめどなく露をあふれさせている自分自身を感じながら、周は泣きそうになった。
 どうして自分はこんな風になってしまうのか。直人と初めて会ったときもそうだった。とある資産家の別荘に居つく怨霊退治を依頼された周は怨念を浄化することに成功したが、そのあといつものように湧き上がった激しい性欲に苦しんだ。そのとき、その別荘の管理人のアルバイトをしていたのが直人だ。
 周が体調を崩したと勘違いした直人が介抱してくれたのだが、心と身体の興奮を抑えきれなかった周は、成り行きで直人と身体の関係を持ってしまった。あのときだ。あのとき他人から与えられる快楽の凄まじさを、周の身体は覚えてしまった。
 それからも何度か直人は周の怨霊退治の場に立ち会う機会があった。そして周が同じ状態に陥るたび、直人は——。
「広瀬……ほんまに、もう…」
「いまさらやめられないだろ、こんなになってるのに……。出してしまえよ。すっきりするから」
 そうささやきながら、直人は唇を周の首筋に這わせた。その間も手は休みなく周をなぶり続けている。
「…は……うっ…」
 切ない快感に耐えきれず、周は頭を振った。髪が乱れ、目にかかる。その髪を直人は空いた手でかき上げると、首筋に這わせていた唇を周の頬へと、そして口元へ移し……。
「んっ」
 周の唇を割って、直人の舌が入ってくる。熱く柔らかい感触が、探るように口の中でうごめく。そして周の舌を探し当てると、ねっとりと絡めてきた。