立ち読みコーナー
目次
226ページ
ターゲット    ……7
あとがき     ……225
 ただ触らせて終わるのなら、キスと同じ、許してもよかった。だが、嘉納の様子からはそれ以上を求める熱さが感じられ、さすがにそこまでとなると許容範囲を超えている。
「終わらせないと駄目ですか?」
「当たり前だ。男とセックスなんかできるか」
「やらないうちから、できないって決めつけるのはどうなんでしょう?」
「屁理屈を言ってんじゃねえよ」
 廉慈は顔を顰めて吐き捨てるように言った。
 この不利な体勢でも、廉慈にはまだ余裕があった。今は両手を嘉納のそれぞれの手によってソファに縫いつけられていて、腰に跨がられているから、身動きが取れないが、いつまでもこのままではいられないはずだ。両手が動かせないと、嘉納も次の行動に移れない。手を離したときが廉慈にとっては反撃のチャンスで、充分に嘉納を殴り飛ばせる自信があった。
「だったら、またキスをさせてください。キスはよかったんですよね?」
 それでいいならと廉慈が肩を竦めることで了解を示すと、嘉納は唇ではない場所に顔を埋める。首筋に熱い息が当たり、すぐに柔らかい唇の感触が与えられる。
「おい」
「キスは唇にだけなんて決まりはありませんよね?」
 廉慈の抗議を嘉納が軽くいなす。唇を触れさせたままで喋られると、くすぐったいようなもどかしいような、妙な感覚に襲われる。
「屁理屈ばかり言いやがって」
「それだけ必死なんです」
 そう言って嘉納が自嘲気味に笑う。その笑顔が卑怯だ。感情表現が少しははっきりしてきたとはいえ、それでもまだあまり多くないだけに、滅多に見せない笑顔が、願いを聞き入れないことに罪悪感を覚えさせる。だから、つい、それくらいならと受け入れてしまうのだ。キスを許したのもそのせいだ。
 廉慈が拒まないことが了解の合図となり、嘉納の動きに遠慮がなくなる。最初は躊躇いがちに首筋に口づけたくせに、今は大胆にシャツをたくし上げている。その間、廉慈の手は自由になった。けれど、キスで留まっている分には好きにさせることにした。
「んっ……」
 露わになった胸元を唇が掠めた。その慣れない感触に思わず声が出る。
 それを嘉納は廉慈が感じたからだと受け止めたらしい。微かに触れる程度だった唇が、はっきりとした意思を持って小さな胸の尖りを吸い上げる。
「……っ……」
 息を詰めたのは、軽い痛みを感じたせいだ。それくらい強く吸い上げられた。
 男の胸など膨らみもなければ乳首も小さい。愛撫のし甲斐もないように思えるのに、嘉納は夢中になっている。吸うだけでは飽き足らず、舌で転がし、軽く歯を立てたりと、執拗に刺激を与えてくる。
 最初はくすぐったいだけだった。だが、これだけ愛撫を受け続けると、胸の辺りは朱くなり、腫れてわずかに大きくなった乳首も、ジンとした痺れを感じるようになる。
「うん……ふぅ……」
 意図せず甘く掠れた息が零れる。なんと形容していいのかわからない、初めての感覚だった。
「気持ちいいですか?」
 胸元から顔を上げず、嘉納が問いかけてくる。
「さあ、どうだろ」
 誤魔化すつもりはなく、ただ自分でもわからないから答えが曖昧になっただけだ。だが、この答えでは嘉納は満足しなかった。
「だったら、こっちはどうです?」
 嘉納がようやく顔を上げ、体をずらして、廉慈の中心に視線を移す。嘉納が何をしようとしているのか、一目瞭然だった。
「そこもか?」
「キスだけです」
 だから、当然の権利だとばかりに、嘉納はファスナーを下ろすと、前を広げて下着の中から廉慈の中心を引き出した。
 廉慈からすれば、他の男のものなど見たいとさえ思わないのに、嘉納は躊躇なく、そこへ顔を近づけていく。
「は……ぁ……」
 さすがに敏感な場所に口づけられては、反応を隠せない。口で愛撫されたことはあるが、相手はすべて女性だった。相手が男に変わると、ただ屹立に唇を這わされるだけのことにこんなにも感じてしまうのが、廉慈には理解できなかった。
 嘉納は屹立の至る所に唇を軽く触れさせていく。先端にさえ、ちゅっと音を立てる一瞬のキスで終わった。
 もっと強い刺激が欲しい。本能が単純に求めてしまう。その証拠に自然と腰が揺らめく。
「キスだけじゃ足りませんか?」
 廉慈の反応に気づいた嘉納が、得意げな顔で尋ねる。廉慈を焦らして自分からねだらせるのが目的だったと気づいても、もう止められなかった。廉慈の中心は微妙な刺激でも変化を示していて、それは隠しようがない。
「わかったよ。キス以上も許してやるから、とっとといかせろ」