立ち読みコーナー
目次
242ページ
神獣の褥  ……7
あとがき  ……233
「さあ、リーミン。おまえを女体にしてやる。そしておまえを我が妻として、夜と言わず昼と言わず、ずっと可愛がってやろう」
「いやだっ! やめろ! 汚らわしい手で私に触れるな!」
 リーミンは一挙に怒りを爆発させた。
 恐れげもなく暴言を吐かれ、天帝は信じられぬように赤い眼を瞠る。その一瞬の隙をついて、リーミンは天帝の拘束から逃げ出した。痩せた身体を突き飛ばし、くるりと身を翻して走りだす。
 一刻も早くこの場から姿を消そうと、水晶柱を収めた額に手をやった。
 が、それより早く“力”を使った者がいた。ふたりの兄だ。
 闇夜を引き裂く稲妻と、すべてを薙ぎ払う突風が、リーミンの身体に容赦なく突き刺さる。
「ああっ」
 胸をはだけた半裸の格好で、リーミンは無様に床の上へ転がされた。あとを追ってきたのは蜘蛛の糸のように身体に絡みつく天帝の光線だった。
「いやだ! 放せっ!」
 動きを封じられたリーミンは、もがきながらも懸命に手を差し伸べた。
 その先には銀色の狼しかいない。
「リーミン、この父にまだ逆らう気か? 妻にして愛でてやろうというのに、何が気に入らぬ?」
 背後から怒った天帝の大音声が響いてくる。
 床にねじ伏せられたリーミンはさらに怒りを募らせた。
 こんな目に遭わされる覚えはない。理不尽なやりように、心底腹が立った。
「汚らわしい手で私に触れるな!」
「なんだと?」
「あなたなど、もう父とは思わない。私は邪な欲望の犠牲になどならぬ! 私を妻にする? はっ、気でも狂われたか? おぞましい!」
「リーミン、父に向かってなんという口のきき方か!」
「実の父の妻になるなど、吐き気がする。あなたの妻になるぐらいなら、そこの獣と番になったほうがまだましだ!」
 リーミンは我知らず、銀色の狼を指さして叫んだ。
 そのせつな、額にひどい衝撃を食らう。
「ああっ!」
 虚空から伸びた巨大な手で、リーミンは頭部をわしづかみにされた。次の瞬間には太い指がずぶりと額にめり込み、中から無理やり水晶柱を抉り出される。
「ああっ……く、ぅぅ」
 身内を襲った激痛に、リーミンはびくんと反り返った。
 そして、“力”の源を失った細い身体はくたりと前のめりで床に倒れ伏す。
「天帝である我に向かい、ようも言うてくれた。おまえにはきつい罰が必要だ。望みどおり、おまえはそこの獣神にくれてやろう。下界で獣の番となるがよい」