立ち読みコーナー
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嫁ぎつね
あとがき
「……僕……発情してるみたいなんです」
「はあっ!?」
「触られて……なんだかスイッチが入ったみたいです。ごめんなさい……」
 恥ずかしながら、銀之助は発情を向かえたことはまだなかった。
「入ったみたいって……発情!? おお……お前、尻尾がはみ出てるぞ!」
「発情したら……僕……もう自分でもどうしていいのか分からない状態になって……」
 銀之助は慌ただしく服を脱いで裸になろうとしたが、吾朗に止められる。が、その手を払って上着を脱ぎ、ズボンを脱ぐ。ズボンの中でパンパンになっていた尻尾がようやく自由になって、少しだけ安堵できた。けれど根本的な疼きはますます酷くなっていく。
「おいおい……脱ぐなっ!」
「吾朗さん、僕のこと嫌いですか?」
「嫌いじゃ……ないが……」
「じゃあ……僕を助けると思って……お願いします」
 吾朗ににじり寄り、銀之助は目を潤ませて見上げた。ここで吾朗に拒否されたらどうしようという不安で頭がいっぱいだ。
「そんな目で見るな」
「だって……僕……こんなときに突き放されたら……ひと晩じゅう身悶えておかしくなってしまうかも……!」
「馬鹿なことを言うな!」
「吾朗さん……お願い……僕を抱いて」
 見上げる吾朗は両手を後ろについて、半ば退き気味であったが、寝室から出ていく様子はなかった。銀之助の緊急事態を理解しようと、必死に考えているようだ。
「……なあ、水風呂に入ってみるか?」
「吾朗さん! 僕、発情してるんです! 水風呂なんか嫌です!!」
 欲情して身体から火が噴き出しているような状態だからか、思わず銀之助は大声を上げていた。いつもとは明らかに違う銀之助の様子にさすがの吾朗も理解したのか、両手を前に戻して座り直す。
「ああもう、分かった。くそっ。仕方ねえな。後で文句を言うなよ」
 吾朗は絡みつく銀之助を引き離して座らせると、蜜で濡れた下着に手をかけた。