立ち読みコーナー
目次
159ページ

「んっ」
 そっと唇が重ねられると、桜澤は小さな声をもらして肩をピクリとさせたが、やはり抗うことはなかった。
 小早川にキスされたときは逃げたのに、今は抵抗しなければと思うこともない。
 触れ合う柔らかな唇、優しく頬に触れる指先、ほのかに漂うトワレの香りに、夢心地になっている。
 そうした反応に中條寺は気をよくしたのか、頬に添えた片手を桜澤の背に移すと、くちづけたままその手でしっかりと抱きしめてきた。
 優しく重ねられた唇に、桜澤の鼓動はどんどん速くなっていく。
 それはうっとりするようなキスだった。
「んふっ……」
 甘い吐息を零す桜澤の頬が火照っていく。
 そっと差し入れられた舌先に、肩をビクッと震わせたが、突き放すような真似はしなかった。
 口内を舌先でまさぐられる驚きと戸惑いに、桜澤はただ唇を重ねているだけだ。
 抵抗はしないが、キスに応えることもない。本格的なキスの経験がないだけに、どうしていいのかわからず、なすがままになっているのだ。
 桜澤が抗わずにいると、中條寺はキスを続けたまま、背に回していた手を股間に滑らせてきた。
「んっ……」
 桜澤は思わずといった感じで顔を離したが、ソファに座っていては腰も引けない。
 柔らかな笑みを浮かべている中條寺を、困惑も露わな顔で見返しながら、自分に触れている彼の手を押さえた。
「舞台では聞いたことがない可愛い声だね」
 顔を真っ赤にしている桜澤は耳元で甘く囁かれ、真っ赤な顔がさらに赤くなったのがわかった。
 すると、彼は、股間に置いている手に、にわかに力を加えた。
「やっ……」

▽電子書籍版はこちら