立ち読みコーナー
目次
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愛とバクダン
愛とバクダン2
嘘と少年
 あとがき
(約束なんぞ知るか。お前は引っ込んでろ)
 そんな言葉で片づけると、竜崎は謙二朗をじりじりと追いつめていく。
「心配で泣いたんだろう?」
 え、どうなんだ……、と言うと、ほとんど聞き取れないくらいの声が返ってきた。
「……、……かよ」
「なんだ? 聞こえないぞ」
「そうだよっ、心配して悪ィかよ!」
 悔しそうに唇を噛みながら、謙二朗はやっとそれだけ白状した。まるで好きな相手に告白でもしたかのように、目許をほんのり染めているのだ。百戦錬磨の竜崎だったが、こんな反応は久しく見ていない。
「ほら。もう後がないぞ」
「!」
 背中が壁に当たると、謙二朗はゴクリと唾を呑んだ。竜崎はその両手を壁につき、逃げ場を奪うとすぐ上から見下ろしてやる。
「おい、もう俺は我慢の限界なんだよ」
「……な、何が?」
「あの時の台詞、覚えてるか?」
「……、……なんのことだよ?」
「嘘つけ。覚えてるだろうが」
 頑なに視線を合わせようとしない男の顔をすぐ近くから見つめてやり、その表情をじっと窺った。まるでキスの一つすらしたことがないような反応に、何もかも奪いたくなる。

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