立ち読みコーナー
目次
255ページ
ホドケナイ鎖〜第1章〜
ホドケナイ鎖〜第2章〜
らぶらぶ・バレンタインデー 〜大型犬、ご褒美をもらうの巻〜
あとがき
「なぁ……大和」
 窓から差し込む淡い月の光に、聖の濡れたまつげが宝石のようにきらめいた。
「ん?」
「お前さ……俺に……」
「……なに?」
 それは、ほんの気まぐれ。好奇心。
「俺に……キス……したいか?」
 潤んだ瞳を、伏せた長いまつげで隠した聖が、感情の籠らない声でつぶやくと、空耳かと思ったのか大和の動きが止まった。
 それでも、彼が喉を鳴らす音は聞こえてしまう。
 聖のいつもの気まぐれに、大和が鳥肌を立てるほど興奮しているのがわかった。
「したいんだろ? ほら、俺って遙にそっくりだし」
「そんなこと言うなッ。聖は聖だ!」
「だったら……俺に、キスしてみろよ」
 ふざけているはずの聖の声もかすれていて、大和は彼の本気がどこにあるのかを見失う。
「ダメだ……聖。そんなことしたら、俺……」
「ほら、簡単だろ? してみろって!」
 怒ってまぶたを開けた聖の瞳は、ほんのり潤んでいて、大和はたった一撃で壮絶な誘惑に撃ち抜かれてしまう。
「ダメだッッ……聖」
 それでも必死で理性を保とうと、情熱の奥底からあふれる熱を逃がすために息を吐き続けた。
 だが聖は、それさえ許さないとばかりに、大和の首に両腕をまわして、顔を引き寄せる。
「大和……なぁ……早く、大和」
 さっきまで喘ぐように細い息をつむいでいた唇が、名前を呼びながら近づいてくると、大和は反射的に目を閉じてしまう。


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