立ち読みコーナー
目次
285ページ
それはベッドから始まった
クリスマス・イヴの花火
秘密(イケナイ)のお部屋
 あとがき
 彼らは現在、とってもプラトニックな恋愛を進行中だ。
 もともと恋愛の基本順序をすっかり無視し、Cから始まったブッ飛んだ関係の二人だったが、エッチした時の記憶は、すでに忘却の彼方(かなた)へ消えつつある。
 ナゼかというと、二人が二度目にエッチして以来、セックスはおろか、キスすらしていないピュア・ラバーだったりするからだ。
 それにしたってなぁ……今さらのような、この中学生純愛はいったいなんだ?
 あいつ……もう俺とエッチしたくないのかなぁ?
 坂下は、そう思わずにはいられない。
 二回目以降、あいつは俺にキスさえ求めてこないし、好きだと言ってもくれない。
 俺って、本当に愛されてンだろうか? この頃、超ー疑問だよ。
 マンションの自動ドアを一歩出ると急に冷気が肌を取り巻き、寒がりの坂下はピーコートの襟を立てて合わせる。
「寒いなぁ。雪でも降りそうな冷え方だよ?」
 だが、見上げた夜空は綺麗に晴れわたって、数多(あまた)の星がまたたいていた。
 群青の宇(そ)宙(ら)を見ていると、なんだか今の自分の悩みが、ひどくつまらなく思えてくる。
「まぁ、いっか」
 どっちにしたって、冬休みには二人きりでスキーに行けるんだもんな。
 う〜ん。
 あっちで過ごすってことは、もしかしなくても今年はホワイトクリスマスになるわけだ。
 基本的にネアカな坂下は、すぐに思考の転換を図ると、いつもの彼らしい明朗な笑みを浮かべた。
 そうそう。
 だいたいこの俺サマが、年下の石丸ごときに悩まされてたまるかってンだ!
 プラス思考。プラス思考!
「よしッ、寒いから家までランニング!」
 いつものイケイケ・フェイスに戻った坂下は、革のカバンを振りまわして駆けだしていった。

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