立ち読みコーナー
目次
272ページ
一章 サムシング・アバウト・ユー
二章 ロール・イット・オーヴァー
三章 ジレンマ・モンスター
四章 ワン・ソウル ワン・ライフ
 あとがき
 ジュリエットであるところの俺は、自分の脇に横たわる江南ことロミオの身体にすがりつき、さめざめと泣いた。
 またしても、客席は大笑いと拍手である。
(なんでだよ〜)
 あろうことか、仕事を終えて客席に回ったクラスの連中まで笑い転げているのが見える。いちばん大きな声で笑っているのは、あの大西のクソ野郎だ。
 滅茶苦茶ムカつきながらも、ここで舞台を飛び下りて殴りにいくことはできない。みんなの努力の結晶である舞台を、俺ひとりのせいでぶち壊すわけにはいかないのだ。
(あとで覚えてやがれ!)
 心の中で悪態をつきながら、俺は床に跪き、仰向けに横たわる江南の上に覆い被さった。
「おお、ロミオ。わたくしもすぐに参ります」
 爆笑。
 いちいち笑われていたら、やりにくくて仕方がないのだが……。次が、最も皆が待ちかまえている場面なので、笑いはすぐに収まり、場内は静まりかえる。
 そう、とうとう練習のときも大騒ぎだった、問題の箇所に来てしまったのだ。
 つまり、短剣で胸を突く前に、ジュリエットがロミオに別れのキスをするシーンを、これから俺は演じなくてはならない。
 もちろん、本当にキスする必要はないのだが、それでも、男同士でギリギリまで顔を寄せるのは、なかなか不気味なものだ。

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