「……させてくれ」
「いやです」
アンティークをめぐる事件を軸に、緒方と三本木の恋の駆け引きが展開するシリーズ第一弾!
甚平に無精髭がトレードマークの野性味溢れる男、緒方は老舗骨董店『尾形』の主。銀行員の三本木とは浅からぬ縁があり一線を越えた仲なのだが、その後はつれなくされる日々。ある日、緒方は画商の四方から名画の購入を勧められるが、うまくすぎる話に乗りきれず取引に二の足を踏んでいた。ところが、この儲け話に目が眩んだ守銭奴の三本木がまんまと騙され、贋作を掴まされてしまう。しかも三本木は以前から彼に目をつけていた金貸しの嵯峨から購入資金を調達していた。返済のアテを失った三本木を嵯峨の好きにはさせまいと、緒方は真作の行方を探り始める。同業の『涼泉堂』の若旦那・桂丸を引き込んで辿り着いたのは、四谷の古びた屋敷に住む麗泉と名乗る蠱惑的な青年で……。