立ち読みコーナー
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 義兄弟の在り方
  あとがき
「……んっ」
 ベッドに四つん這いになって、立ったままの菅野の男性器を深く口に含み舌を使う。菅野が頭上で小さく声を漏らした。
 手で後ろの袋を揉みながら、ねっとりとしゃぶる。
「濃厚……さすが樹ちゃん」
 男の息が乱れていくのがうれしい。菅野の手に褒めるように頭を撫でられ、樹はさらに深く、男自身を呑んだ。
 かちゃりとドアが開く音と、「ただいま」と恭太郎の声がしたのはその時だ。
(え)
 とっさに口を離そうとしたが、逆に菅野に頭を押さえられた。
「続けて?」
(でも恭太郎が)
 全裸で男の股間をしゃぶる姿を弟に見られてしまう。
「あ、ああえ……」
(放せ)
「樹? お客さん?」
 声がどんどん近づいてくる。
「やあ、お邪魔してるよ」
 樹には見えないが、恭太郎は開いたままの引き戸からベッドルームをのぞいたらしい。菅野が樹の頭を自分の股間に押さえつけたまま、落ち着き払った声を出す。
「な、に……して……」
 震える恭太郎の声に、樹はようやく菅野の手を振り払った。身を離し、掛け布団であわてて身をくるむ。
「ち、ちがうんだ、恭太郎……」
「…………」
 真ん丸に見開かれた目がふたりを見る。
「やあ、恭太郎くん。悪いんだけど一時間ばかり、どこかで時間を潰してきてくれないかな」
「……は? どういうことですか?」
 顔を強張らせて恭太郎が問い返す。
「見てわからない? 今からするの。だから出ていってくれないかなって」
「ち、ちがう……し、しない……菅野さん、もう今日は、帰って……」
「えーなんで? 樹ちゃんだってその気だったじゃん」
「ちがう……」
 ふたりのやりとりに恭太郎は背を向けるのではなく、逆に一歩、部屋の中に踏み込んできた。その表情が硬い。
「俺は出ていきません。……前は、逃げてしまったけど、もし同じことがあったら、次は絶対出ていかないって、決めてましたから」
「……へえ」
 菅野の口元に、あまり性質のよくない笑みが浮かんだ。
「出ていかなかったら、どうするの? そこで見学してる? お兄ちゃんが男にされるとこ」
「菅野さん!」
「それとも……」
 横目で恭太郎を挑発するように薄く笑い、菅野はベッドへと入ってきた。樹が羽織っていた布団をはぐり、背後から抱き寄せる。
「菅野さん、やめ……!」
 菅野はやめなかった。抱き寄せられて体勢を崩した樹の膝を恭太郎に向かって開く。
「やっ!」
 高い声とともに股間を隠そうとした樹の手を、菅野はやすやすと掴んだ。
「いいだろ、見せてやれば。……恭太郎くん、どうする? 見てく? それとも……混ざる?」
 なんてことを言い出すんだと樹はもがいたが、意外と筋肉質な菅野の腕はびくともしない。
「菅野さん! バカなこと言ってないで、放して……放せ!」
 怒鳴りながら、抱え込まれた菅野の胸から逃げようと身をよじる。が、その動きを封じるように上から肩を押さえられた。
「えっ」
「――樹」
 恭太郎だった。弟に剥き出しの肩をぐっと押さえつけられて、樹は目を丸くする。
「恭太郎……なにを……」
 まさか、まさかと混乱する。
 見上げた恭太郎の顔には表情がないように見えた。ただその瞳だけが狂おしく光っている。
「……ごめん、樹。俺もう……なにもできずに、逃げるの、やなんだ……」
 顔を動かさず、視線だけを動かして恭太郎は菅野を見た。
「菅野さん、俺はこの人が好きなんです。本当は誰にもさわらせたくない。……あなたが、出ていってくれませんか?」
 樹を後ろから抱え込んだまま、菅野は短く笑った。
「それはできないな。あとから来たのは君のほうだろ? でも俺は君に出ていけとは言わない。そこで見ていってもいいし、その気があるなら混ざってもいいよって譲歩してるんだよ?」
「バ、バカなこと言わないでください! 恭太郎! おまえも……」
「本当に、混ざっていいんですか?」
 その恭太郎の言葉に、樹は「恭太郎!」と叫んだ。
「バカッ! なに言ってんだ! 菅野さんも放して!」
「俺は大歓迎だよ。恭太郎くん、男を抱いたことはある? いろいろ教えてあげるよ」
「菅野さんっ! 恭太郎っ!」
 怒鳴る声が裏返る。
「やめろっ! なにふたりしてバカなこと言ってんだ! あっち行け! 出てけ!」
「……ずっと……」
 樹の必死の叫び声など聞こえないように、恭太郎はベッドのかたわらに膝をついた。片手で樹の肩を押さえたまま、もう片手で樹の膝に触れてくる。
「ずっと……樹の裸、見たかった……樹のここ、どんなふうかなあって……ずっと想像してた」
 広げられた脚の奥を舐めるように見つめてくる恭太郎の視線に肌が粟立った。恐怖や嫌悪のせいではなく、欲情の炎を宿すその瞳を、樹の中のなにかが喜んでいるせいだった。
「きょう、たろ……」
「いつき」
 恭太郎の顔が股間に近づいてくるのを、樹はなすすべもなく見つめる。形よい唇が樹のペニスの先端に押し当てられ、そして開いて、咥え込んでいく――。
「――ッ」
 ぞくぞくぞくっと全身に快感が走り抜け、樹は唇を噛んでのけぞった。声を出さないようにするのがせめてもだった。
 ひゅう、と菅野が口笛を吹く。
「いいねえ、弟くん。じゃあどっちが樹ちゃんを気持ちよくさせられるか、勝負しようか」