立ち読みコーナー
目次
0ページ
 狼の嫁迎え
 狼は嫉妬する
あとがき
   1

 椎名玲(しいなれい)の心臓は破裂せんばかりに脈打っていた。
 二十年の人生のなかで、これほど緊張したのは初めてかもしれない。
 喉元(のどもと)が苦しくて無意識に手をやり、ネクタイに触れて自分の格好を思い出す、という行為を何度も繰り返している。
 涼しげな夏素材のスーツにぴかぴかの革靴は、どちらも値の張るイタリアの高級ブランドらしい。
 玲は服なんて着られればそれでいいというタイプで、ブランドどころか、揃えるべきアイテムすらわからなかったため、真神隼斗(まがみはやと)が諸事準備万端、整えてくれた。
 隼斗は、一言で言えば玲の保護者である。
 七歳年上の、陽気で頼り甲斐のある彼は玲の話をよく聞いてくれ、身の上に同情し、まるで兄のように接して気遣ってくれる。
 日本を出てイタリアまで来られたのも、恥ずかしくない衣装を着て、この格式高いホテルに潜(もぐ)りこめたのも、すべて隼斗の尽力のおかげだ。
 今このときも、隼斗は玲のために動いてくれているはずである。
 椅子(いす)に座ってじっとしていることができなくて、玲は壁にかけられた鏡の前に立って自分の姿を映した。
「……せっかく買ってもらった服だけど、似合ってないな」
 鏡に映る自分をまじまじと見て、そう評価を下す。
 玲は日本人の父とロシア人の母を持つハーフで、双方が入り交じったエキゾチックな容貌(ようぼう)をしている。髪は父譲りの黒で、肌の白さは東スラヴ人のものだ。グレイの瞳もきっと、ルーツはロシアにあるだろう。
 顔立ちは父には似ていないが、母に似ているかどうかはわからない。
 父はエカテリンブルグで医師をしており、そこで母と出会って結婚し、玲をもうけた。幸せな生活は長くはつづかず、母は玲が二歳のときに、玲と父を置いて出ていったと聞いている。
 それ以来一度も会わず、写真もなかったので、母の顔も声も匂いもまったく覚えていない。べつに知りたいとも思わなかった。
 ロシアで生まれた玲は、八年前に日本に移り、今は東京で一人暮らしをしている。
 文化の違いに戸惑った日本も、隼斗がいろいろ助けてくれるおかげもあって、慣れれば住みやすくていい国だと思えるようになった。
 でも玲はいつか必ずロシアに帰ると決めていた。
 母に捨てられた玲を受け入れてくれた、優しく温かいエカテリンブルグの仲間たちのところへ。
 曇り空みたいな色の瞳が、鏡の向こうから玲を見返している。
 小作りな顔に配置されたぱっちりした二重(ふたえ)の目と、ふっくらした唇は、非常に幼い印象を与えるらしい。
 百六十三センチという低い身長も相俟(あいま)って、本当は二十歳なのに、十五、六歳の少年が背伸びして大人のスーツを着ているようにしか見えず、どこか滑稽(こっけい)だった。
 似合いもしないこんな服、本当は今すぐ脱いでしまいたかった。
 ネクタイも靴も取り払って裸になり、ついでに人型という皮まで脱ぎ去って、玲本来の姿に変わりたい。
『おい、玲。俺が戻るまで、そのままでじっと我慢してろよ。首元が気になるのはわかるがネクタイには絶対に触るな、勝手に緩めるな。お前一人じゃ、直せないんだから。みっともない姿を見られて、恥ずかしい思いをするのはお前だぞ。わかったな』
 部屋を出ていく前に、何度もそう念を押した隼斗の言葉が、脳裏(のうり)でこだました。
「……わかってる。そんなことしたら、隼斗に迷惑をかけるし、今までの苦労が水の泡になる。我慢しろ、我慢だ」
 玲は鏡に向かい、誘惑に負けそうな自分を威嚇(いかく)するように歯を剥(む)きだしにした。
 人間では持ちえない長く鋭い牙(きば)が、唇からにゅっと伸びた。喉元で鳴っているのは、人間には出しえない獣の唸(うな)り声。
 こんな玲を人間が見たら、人間の皮を被った狼(おおかみ)だと評するだろう。
 それは、まさに正しい表現である。
 玲は人狼(じんろう)という、人間とは違う種類の生き物だ。
 人間社会で生きていくために人間の形を取り、人間のふりをしているけれど、玲が持って生まれた姿はこんなものではない。
 薄っぺらい皮膚ではなく、気高い毛皮に身を包み、鈍い二本足ではなく、力強い四(よ)つ肢(あし)で疾風(しっぷう)のように地を駆ける。
 狼の姿へ獣化するときの解放感は、言葉では言い表せない。
 人間に比べれば桁違(けたちが)いに数は少ないが、人狼は世界中に存在し、人間に紛(まぎ)れつつ、それぞれ人狼族のコミュニティを築いている。
 十二歳半ばでロシアから日本に連れてこられた玲は、関東一円を縄張りとする神名火(かんなび)という群れに受け入れてもらうことになった。
 人狼の群れには明確な序列があり、知力や戦闘力に優(すぐ)れ、高い統率力を持つ最高位をアルファとし、その下にベータ、ガンマ、デルタとつづいていき、下位が上位に逆らうことは許されない。
 順位は戦闘によって勝ち取るものでもあるので、入れ替わることもある。
 隼斗は神名火のガンマで、玲の順位は下から数えたほうが早い。
 人狼は満月の夜になると、狼に変身せずにはいられない強烈な衝動に駆られ、新月になると、逆にどんなに頑張っても獣化できなくなるものがほとんどだが、個体差が大きく、序列上位の人狼は満月期でも人型のままで過ごせる忍耐力、新月期でも獣化できる力を持っていて、しかもそれを完全にコントロールできる。
 獣化能力があるのは純血種のみで、交配により少しでも人間の血が混じってしまうと、その子孫は狼にはなれない。
 純血種の玲は、新月期でも難なく獣化できた。
 というより、狼の姿でいたほうが肉体的に楽で、満月の前後を含む満月期には、獣化衝動が高まりすぎて人型に戻れないほどだった。
 人狼族は獣形こそが本来あるべき姿だとする種族で、純血種は憧憬(しょうけい)の的(まと)である。
 しかし、人間社会で人狼であることを隠しながら生きている以上、月に三日も人型に戻れない個体は異端でしかなかった。
 人と狼の境界がつねに不安定な玲は、神名火のアルファである真神鋼(はがね)によって、群れの外へ出ることを禁じられている。
 獣化衝動のコントロールは玲の課題だが、克服は不可能に近い。
 理由もわかっている。
 玲は人型になっていた母の胎内から、狼の姿で誕生した。
 そして、七歳半ばまで一度も人型になることがなかった。
 ロシアのウラル地方の伝承では、狼で生まれ、何年も狼で過ごしたのち人型になる人狼は、『戻り狼』と呼ばれ、狼の性質が強いという。
 玲が人型の維持に苦慮し、月齢に関係なく狼に戻ろうとするのは、その生まれのせいだと思われた。
 戻り狼は滅多(めった)に生まれず、日本に至っては存在が確認されたこともなかったそうで、狼に近い玲をどうすれば人間の性質に近づけられるのか、解決方法は見つかっていない。
 鏡を睨んでいた玲は、部屋の外、廊下のずっと向こうでエレベーターが止まる音を聞きつけ、牙をしまって唸るのをやめた。
 いよいよ待ち人が来るのかと、息を止めて気配を窺(うかが)う。
 聴覚、嗅覚、動体視力、膂力(りょりょく)など、人狼は人間よりはるかに優れた力と感覚を持っている。人型では獣化しているときより若干鈍くはなるが、それでも人間の比ではない。
 エレベーターから出てきた人は、玲がいる部屋とは逆方向へと向かっていった。
「……違う。サーシャじゃなかった」
 緊張で止めていた呼吸を再開し、玲はひっそりと呟(つぶや)いた。
 玲が心待ちにしている人の名前は、アレクサンドル・ニコラエヴィチ・ヴォルコフ。愛称、サーシャ。
 ロシアの人狼で、玲が帰りたいと願う故郷、エカテリンブルグを縄張りにしているエリニチナヤという群れのアルファだ。
 アレクサンドルと離れ離れになって、もう八年近くになる。
 玲は一瞬だって、彼を忘れたことはない。一目でいいから会いたかった。
 アレクサンドルの人間社会における肩書は新興財閥のトップで、実際にやり手の企業家らしい。
 日本で暮らすことになったときに、玲はエリニチナヤの仲間たちとの接触を禁止されたので、そういう情報を調べて教えてくれるのは隼斗である。
 隼斗は少し前に、アレクサンドルがイタリアのとある企業を買収するという情報を掴み、会合の場所であるこのホテルで、玲とアレクサンドルの再会のチャンスを作るという計画を立ててくれた。
 周囲の目を欺(あざむ)き、鋼さえも出し抜いて、二人は日本を出国し、イタリアに入国した。
 玲と接触を禁止されているのはエリニチナヤ側も同じで、正攻法で面会を申し入れても、アレクサンドルは会ってはくれないだろうから、たとえ彼を騙(だま)すことになろうと、なんとかしてこの部屋に連れてくる方法を考えると隼斗は言っていた。
 つまり、アレクサンドルは玲がここにいることを知らない。
 玲を見たアレクサンドルの反応を考えると、心臓がどきどきする。
 ルール違反はアレクサンドルのもっとも嫌うところだ。彼は玲を叱り、説教をするだろうが、それでも、本心ではきっと喜んでくれると玲は信じている。
 エリニチナヤにいたころ、アレクサンドルの一番近くにいたのは玲だった。玲は一回り年上のアレクサンドルが大好きで、アレクサンドルも玲を特別に可愛がってくれた。
 狼でしかいられなかった七歳半ばまでの玲も、人型に変わることを覚えた玲も。
『レイ。可愛い私のレーニャ』
 優しいアレクサンドルの声を思い出し、玲は目を閉じた。
 レーニャとは、アレクサンドルしか呼ばない玲の愛称である。
 ロシア人は本名よりも愛称で呼び合う習慣があり、アレクサンドルならサーシャ、イリヤならイリューシャというように愛称形も決まっている。
 ロシアにはレイという名前は存在せず、もちろん愛称形もないため、アレクサンドルが作ってくれたのだ。
 もう一度、呼ばれたかった。一度と言わず、何度でも。
 アレクサンドルのもとに帰りたくてたまらない。
「……っ」
 エレベーターがまた止まり、玲は再び緊張した。
 足音が近づいてくる。三人分の音だ。
 一人は真神隼斗。
 もう一人はアレクサンドルだ。彼の足音はよく覚えているし、絶対に忘れることはない。
 残りの一人は、まったく知らない音だった。
 鼻の利くアレクサンドルに匂いで勘づかれないよう、玲は入念にシャワーを浴びて体臭を薄め、さらに花から抽出したフラワーオイルをほんの少しつけている。慎重を期すために、ドアを開けても見えない位置に隠れておく。
 足音が部屋の前で止まり、ノックもなくドアが開けられた。
 三人が部屋に入ってしまってからも、玲は隠れたところから動けなかった。
 会いたくてたまらなかったのに、いざそこにいるとわかると、頭のなかが真っ白になってしまった。
「……そこにいるのは誰だ」
 先に異常に気づいたのは、アレクサンドルだった。
 警戒心も露(あらわ)な不機嫌そうな声に、玲は我に返り、おずおずと前に出ていった。
 アレクサンドルは玲のほうを向いて立っていた。
 晴れた日の空みたいに青い瞳が、玲を捉える。
 玲は言葉もなく、アレクサンドルに見惚(みと)れた。
 彼と初めて会ったのは、玲が二歳、彼が十四歳のときだ。七歳半ばまで玲は狼だったが、狼の目で見ても、アレクサンドルの美しさは充分に理解していた。
 玲の記憶は二十四歳のアレクサンドルで止まっている。
 当時、彼はすでに大人で、離れたくないと泣きじゃくる玲を抱き締め、額(ひたい)と頬(ほお)に数えきれないほどキスをくれた。
 そして今、三十二歳になった彼は年相応の落ち着きと威厳(いげん)を宿し、精悍(せいかん)で堂々とした立派なアルファになっていた。
 アレクサンドルは玲のすべてだった。
 なのに、電話も話すことも、手紙やメールでやりとりすることも禁じられ、玲は八年も彼なしで過ごさざるをえなかったのだ。
 抑えつけていたいろんな思いが溢(あふ)れてきて、身体を動かす力に変わる。
「……サーシャ、サーシャ!」




 玲は掠(かす)れた声で名を呼びながらアレクサンドルに駆け寄り、床を蹴(け)って飛びついた。
 百六十三センチと小柄な玲が、百九十センチ近いアレクサンドルの首元にしがみつくには、そうするしかない。子どものころはもっと身長差があったので、抱きつくためのジャンプならお手のものだった。
 金に近い銀の髪がふわりと揺れて、アレクサンドルの匂いが玲の鼻をくすぐった。
 懐かしい匂い。
 変わっていない。玲がこの世で一番好きで、安心できる匂いだ。
「会いたかった……! 会いたかった、サーシャ……」
 日本にいる間、ほとんど使わなかったロシア語がするりと口から出てくる。
 しがみついたまま、玲は人型であるにもかかわらず、狼のときのように顔から足から全身を使って、アレクサンドルに擦(こす)りつけた。
 嬉しくて嬉しくて、そうせずにはいられなかった。
 ぐるると喉まで鳴ったとき、ものすごい力で引き離され、縋(すが)るものをなくした玲はよろけて床に倒れこんだ。
 なにが起きたのか理解できず、呆然(ぼうぜん)と見上げた玲の目に、冷たく強張(こわば)ったアレクサンドルの顔が映った。
 礼儀知らずの見知らぬ他人を見るような顔つきだった。
「……サーシャ?」
 冷ややかな表情のなかで、頑固(がんこ)そうに引き結ばれた唇が開く。
「お前は誰だ。私はお前など知らない」
 傲然(ごうぜん)と言い放たれた言葉に、玲はうろたえた。
 規則を破ったことを怒られるかもしれないと考えはしても、お前は誰だなどと存在を否定されるなんて、想像もしなかった。
 突き放すような硬い声には、かつて玲をレーニャと呼んでくれたときに宿っていた甘さの欠片(かけら)もない。
「うそ……。なんで、なんで……?」
 ふらふらと立ち上がり、アレクサンドルに向かって伸ばした手が、横合いからピシャリと叩き落とされる。
 玲とアレクサンドルの間に立ちふさがったのは、玲がまったく知らない男だった。
 アレクサンドルからは一瞬だって目を離したくなかったけれど、正面に立たれてしまうと、無視もできない。
 金髪に淡いブルーの目をした純血人狼が、いつでも牙を剥いて襲いかかれるよう、敵意を露(あらわ)にして玲を睨みつけている。
 玲も受けて立ったが、睨み合った瞬間に、この雄(おす)がアレクサンドルの副官のベータだとわかった。
 人狼同士は対峙(たいじ)すれば、互いの強弱がわかる。歴然とした階級社会で、無駄な戦いをすることなく生きていくために持って生まれた感覚だ。
「……っ」
 狼の本能に支配され、玲は咄嗟(とっさ)に目を逸らした。強い雄に対し、敵愾心(てきがいしん)がないことを示す服従行為である。
 所属する群れが違っても、下位が上位に逆らうことはあまりない。戦っても、負けが見えているからだ。
「下がれ。身のほどをわきまえろ」
 よく斬れる銀の刃(やいば)を突きつけられたみたいに、玲の身が竦(すく)んだ。尻尾(しっぽ)を出していたら、股の間に挟みこんでいただろう。
 ミハイル・オグルツォフはアレクサンドル率いる人狼族の群れ、エリニチナヤのベータで、人間社会では企業家として活動するアレクサンドルの個人秘書も務めている。
 大富豪で経済にも政治にも影響力を持つアレクサンドルには敵が多く、ミハイルはまさしく、アレクサンドルの楯(たて)となり、剣となって身を惜しまず尽くし戦っていると、隼斗が調べて教えてくれた。
 玲がアレクサンドルの群れを去り、入れ替わるようにミハイルが加わったそうなので、お互いに初対面である。
「ミハイル」
 アレクサンドルがミハイルを呼んだ。絶対的存在のアルファと、アルファに服従を誓う下位の人狼たちは、愛称で呼び合うような気安い関係にはない。
 しかし、名を呼ぶだけで、言いたいことのすべてを伝えられる信頼がある。
 玲の胸が嫉妬(しっと)で焼けた。
 エリニチナヤ生まれでない、よそ者の人狼が八年ほどでベータの地位につくのは、相当優秀な証拠だ。
 玲にはベータになれるような力も才覚もないけれど、それでも、つねにアレクサンドルのそばに控え、頼りにされ、守ることができるミハイルが羨(うらや)ましかった。
「承知しました。次の打ち合わせの時間が迫っていますので、ここは私にお任せください。無礼な仔犬の躾(しつけ)は私がしておきます」
 アレクサンドルに向けられたミハイルの言葉に、玲ははっとなって顔を上げた。
 ミハイルの背後に立っているアレクサンドルは、玲に一瞥(いちべつ)もくれずに身を翻(ひるがえ)し、門番よろしくドアの前で立っている隼斗の肩を掴み、強引に押(お)し退(の)けた。
 アレクサンドルが出ていってしまう。
 焦(あせ)りが玲の身体を動かした。
「ま、待って、サーシャ! 俺のこと、本当に忘れちゃったの? 俺だよ、レイだよ! 俺はサーシャのこと、一日だって忘れたことないのに……っ」
 アレクサンドルを引き止めたくて、ミハイルの横をすり抜けていこうとした玲は、ミハイルに足払いをかけられ、また床に無様(ぶざま)に転んだ。
 即座に飛び上がり、邪魔するミハイルをかわして駆けだそうとしたが、遅かった。
 アレクサンドルの背中が遠ざかり、無慈悲(むじひ)にドアが閉じられた。
「いやだ……! 待って、サーシャ待って! お願い……!」
「いい加減にしないか! あの方はお前を知らないと言っている」
 玲の悲痛な叫びを、ミハイルが鋭い声で遮(さえぎ)った。
「そんなはずありません! サーシャが俺を知らないなんて、絶対嘘だ……。彼ともう一度話をさせてください!」
 玲は必死に言(い)い募(つの)った。
 念願だったアレクサンドルと再会できたのに、こんな展開になるなんて、悪夢を見ているようだ。
「私が信じるのは、我がアルファの言葉のみ。そして、それが真実だ。お前がなにを言おうと、覆(くつがえ)らない」
 ミハイルはとりつくしまもなくそう言い、片手で玲のネクタイの結び目を握り、隼斗のほうへと突き飛ばした。というより、投げ飛ばした。
 玲の身体が一瞬浮いて、受け止めようとした隼斗の胸に激しくぶつかる。