立ち読みコーナー
目次
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笑顔ってほらピンクだよね
10カラットの恋をしよう
行く先は空のむこうに
 あとがき
「ん? どうした?」
「恋人でも、ちゃんと言わなくては伝わらないこともあるって、わかった」
「なんだ?」
「学校始まってからオレが変だっておまえ言っただろう? じつはオレは、ずっと拗ねていたのだ」
「うん、それはわかってたんだけどさ」
「なんでおまえはオレとエッチしないんだろう、なんでおまえはオレのそばに来ないんだろう、なんでおまえはオレと帰りたくないんだろう、なんでおまえはオレに……」
「パンを食べさせてあげないんだろうとか?」
 うう、嶋田が気づいていたとは思わなかった。恥ずかしくなって横を向くと、嶋田は身動きできないくらいきつく抱きしめてきた。オレは嶋田のブレザーを掴み、ほうっと息をついて白状した。
「自分からこうしたいって言わないかぎり、どうなっても自分のせいにはならないって思っていたのだ。腹が立つのも悲しくなるのも、エッチな気分を持て余すのも、ぜんぶ嶋田のせいにできる。察しの悪い嶋田のせいだって。……なんだか遠坂と似ているな」
 オレの溜め息に嶋田は忍び笑いで答えた。
「でもオレだったらそれを可愛い甘えと受けとめる。だってオレはおまえのダチじゃない、彼氏なんだから」
「……うん。彼氏だ」
 そのひと言で十分だった。二十四時間構ってくれなくても、それでオレがバカみたいに拗ねても、嶋田はいつもそばにいてくれた。恋の印《しるし》につないだ手を、オレたちは放したことはなかった。そっぽを向いてたって睨み合ってたって手だけはいつもつないでた。この先も、きっとずっと放さない。恋人なら放さない。それだけで十分だ。

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