立ち読みコーナー
目次
258ページ
九尾狐家入内ノ儀 ~お見合い結婚~   7
あとがき                246
182ページ~
「意味はないと思ってた」
「……っ」
「儀式として決められた相手を抱くことには……。犠牲にされたおまえが不憫だと思ってたよ」
「俺が?」
「だったらやめてやればよかったのにな。……やめたくなかったんだな、本音では。あのときやめたら、もう二度とおまえを抱く機会なんてないと思ってたから。……おまえ、あんまり幼いから変態みたいな気分にはなったけど」
 苦笑する煌紀に、思わず足が出る。
「そのせいで、おまえをひどい目に遭わせたよな」
「ほんとだよ……っ」
 反駁しながら、また泣いてしまいそうになった。彼がただの義務としてでなく、希んで桃羽との行為をしたのだとわかって。
「おまえを抱いたことは、俺にとっては意味があったよ」
「……っ……」
 ついに涙が零れた。
「あれから誰に誘われてもその気になれなくなったし……どうしてなのか、自分でもよくわからなかったけど」
 煌紀の唇が桃羽の頬にふれ、涙を吸い取った。
「おまえは?」
「……俺?」
「……あれから、誰にもさわらせなかったか」
「な、に言って……」
「……ほかの男とか」
 中に埋められたままの指が、咎めるように掻く。桃羽はぞわりと身を竦める。
「……っ、……賽宮だったんだぞ……っ」
 そんなこと、あるわけがないのに。
「好きな相手はいなかった?」
 いるわけないだろ、と答えようとして、できなかった。
 好きな相手というなら、それはたぶん煌紀なのだと思う。そうでなければ、置いていかれたことをあんなにも長く恨んだりはしなかった。
 なのに本にんからそんなことを聞かれて、思わず彼の胸を拳で叩いた。
「何バカなこと言ってるんだよ、こんなときに……!」
「痛っ」
「あんたじゃあるまいし、……ほかに好きなやつなんて……っ」
 ぽかぽかと繰り返す手を一纏めに掴まれた。もがいたが、放してもらえない。
「もう……っ、いいから黙ってやれよ……っ」
「うん」