立ち読みコーナー
目次
274ページ
その愛に終わりはあるか    7
あとがき           264
163ページ~
 マンションの地下駐車場に停められたトラックから降りた南野は、鷲沢と共に自分の部屋へ向かった。マンション内であっても誰と遭遇するかわからないので、部屋に入るまでは口をきくなと普段から南野に躾けられている鷲沢は、エレヴェーター内でも無言だった。
 沈黙の中で、桐本に嫉妬しているに違いない鷲沢にどう説明するか、考えてはいたけれどうまい言葉が思い浮かばなかった。きっとまた言い合いになって、最終的には自分の説教で終わる。そんな流れが簡単に予想できて、南野は密かに溜め息をつく。
 そうじゃない。そもそも、鷲沢が桐本に…いや、桐本以外の誰であっても、嫉妬心を抱くのは間違っている。鷲沢は根本的なことをわかっていない。どんな相手であれ、自分が誰かになびくことなど、絶対にあり得ないとわかっていないのだ。
 それをどうやってわからせるか。考えて辿り着いたのは、言葉では無理だという結論だった。三階でエレヴェーターを降りた南野は、鷲沢の前に立って歩き、辿り着いた自宅で鍵を使って玄関ドアを開けた。中へ入り、電気を点ける。後から入ってきた鷲沢が「尚三」と呼びながらドアを閉めると同時に彼を振り返った。
「……っ」
 驚く鷲沢を構わず、南野は彼の首に腕を回して口づける。唐突な行動に戸惑っている鷲沢に、いつもは彼の方から仕掛けられるようなキスをした。
「……な…」
 どうしてと問おうとする口を塞ぎ、舌を差し入れる。唇を吸い上げ、誘うように歯を立てる。南野の淫らな仕草は鷲沢にとって願ってもないもので、わけを聞くのは後回しにしようとすぐに決めたようだった。
 腰を抱えて自分の方へ引き寄せ、キスを深くしてくる鷲沢に従って舌を絡ませながら、南野は彼の上着を脱がせる。薄いシャツ越しに、鷲沢の身体に触れ、ベルトに手をかけた。留め具を外してズボンのファスナーを下ろす南野を喜びながらも、鷲沢は戸惑いを滲ませて尋ねる。
「…そんなにしたかったのか?」
「別に」
「なら…」
「お前を満足させたいんだ」
 自分の欲望は別のところにあると言っても、鷲沢に通じないのはわかっていたので、怪訝そうな彼の口を舌で封じた。淫猥な仕草で唇を舐め、整った高い鼻にキスをする。困惑した鷲沢の表情を食べてしまうが如く、彼の顔中に口づけ、南野はズボンの前を開いて鷲沢のものを手にした。
 まだ硬くはなっていないものを柔らかく握り、鷲沢の目を覗き込んで尋ねる。
「どっちの口でして欲しい?」