立ち読みコーナー
目次
258ページ
ヤクザから貞操をしつこく狙われています    7
ヤクザから騎乗位をしつこく求められています  225
あとがき                   256
48ページ~
「柏木……」
 唇がようやく離れ、柏木が体を起こした。
 スーツのジャケットだけを脱いでゆっくりオレの頬に手を伸ばしてくる。
 オレは多分……とろんとした目で奴を見ている。焦点をしっかり合わせようと思うんだけど定まらないんだ。ちくしょう、どんだけキスが上手いんだよ。
「か、んがえ……直さないか……」
 ネクタイを解く指は大人の男のもので。
 二十歳を迎えたばかりのオレなんて、まだまだ子供なんだと思い知らされる。
「今更だな」
 しゅる、とネクタイを外す音がやけに大きく響く。何かを確かめるように伸ばされた手は首筋から鎖骨を辿り、胸の真ん中で止まった。
「昨日、お前の誘いに乗った時点で考えるのはやめた」
 柏木が確かめているのはオレの鼓動だろうか。
 それは、あせりも加わって、いつもより速く大きく鳴り響いている。
「いや、違うな。お前のことばかり考えて他が見えない」
 ど……どんな殺し文句だ。
 胸に置かれた手が、熱い。
「お前が悪い」
 ぐ、と体にかかる重みが増した。
「ガキみたいに、一日中お前を犯すことばかり考えていた」
 軽く触れるキス。
「俺はお前を手にして浮かれている」
 だから、どうしてそんな色っぽい顔で笑うんだろう。
 オレが女だったら絶対にコロッといってる。いや、女とか男とか、この男の前で関係あるのかな?
 うおっ。危ねえ。今、オレかなりヤバいこと考えてた。
「頼むから……」
「昨夜はお前のお願いを聞いてやったんだぞ」
「もう一回くらい、いいじゃん」
 生温いものが首筋を這う。不思議と嫌悪感はないが、気持ちよくても困る。
「……今日、諦めても明日に延びるだけだ」
 チュ、と首筋を吸われて震えそうになる。
 身をよじろうとするが柏木の体はビクともしない。
 腰骨のあたりに当てられた手が滑るように下半身に降りていくのに、オレはあせって体を動かした。だが柏木の拘束は強くなるばかりで文句を言おうと口を開いたところを唇で塞がれる。
「か……しわ……ぎっ」
 息が、上がる。
 蹂躙される口内をどうにかしようと顔をそむけたとき下半身の、それを掴まれた。
「くっ……」
 体に緊張が走る。
柏木がそういう目的でオレの体に触れているのだから当然なんだろうが、そこはやっぱり男にとっては急所で……。だから体が竦んだ。
 それがわかっているのか。
 柏木の手は、ゆっくりと形を確かめるように包み込んでくる。
「やめ……っ……」
「やめないと、言っただろう?」
 まっすぐオレを見る瞳。
 なんて目をするんだと思った。
 口元には笑みを浮かべたままなのに、いつの間にか目だけが捕食者のものに変わっている。気づいた瞬間、ゾクリと寒気が走った。
 まずい。その目はまずい。
 ただの遊びや好奇心だったらと思う。気持ちいいまま流されて、何か高いものでも買ってもらって……。男と寝っちゃたよーなんて笑って。
 柏木くらいのいい男となら一回くらいはアリかなと思う自分がいたことに驚かされたけれど。
 でもこれは違う。
 これは遊びじゃない。
「放せっ」
 ここでやめさせなければ。
「オレはお前のになる気なんてない」
 オレはまだ、オレのものでありたい。こんな男に喰われてしまうわけにはいかない。
「全部、俺のものだ」
 柏木の声ははずんでいるようにさえ聞こえる。ようやくオレが気づいたことに満足しているのか。
「先に入れる。楽しませてやるのはそれからだ」