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Love Love Hip ~壁尻の彼氏~  7

あとがき                   211
102ページ17行目~
「お前の男にしてくれ」
「!?」
突然の言葉に意味がわからない。
「お前の彼氏になって、きっちり性欲処理してやる。だからあの店はやめろ」
奏多はやっとのことで両手を彼の胸に突っ張り、身体を離す。
「やだね」
「なんでだ」
「そう言って責任果たした気になるなよ。俺は俺の意思であそこに勤めてんの。真成の勝手な罪悪感とかどうでもいいから」
「……ふーん」
その瞬間、海堂の纏う雰囲気がピリッと変わったような気がした。それはあの頃、奏多に快楽を教えた日々に聞いたものとよく似ている。
「お前、本番NGなんだろ」
「そ……そりゃ、そんな何本も咥えてたら危ないだろ、色々と」
店でも最後までさせる者はそういない。客のほうもそれほど挿入にはこだわってはおらず、シチュエーションのほうに興奮を覚えて素股で満足する客が多かった。
「俺のものは入れてたよな?気持ちいいって、尻振ってた。それなのにずっと素股しかしてなかったんじゃあ、疼くんじゃないのか?」
「─っ」
図星だった。
海堂によって開発されてしまった奏多は、挿入の快感を覚えてしまっているのに、客の指だけでは時折物足りなさを覚えることがあった。たまに淫具で奥まで刺激されることもあったが、当たり前だが彼のものを入れられる感覚とはまるで違っていて、快感はあっても満たされることはあまりない。
かつての快楽を思い出してしまって、肉体が下腹からカアッと熱くなってきた。思わず、ごくりと喉が鳴る。
そして、海堂はそれを見逃さなかった。体重をかけられ、身体がソファに沈み込む。
「久しぶりに入れさせてくれよ」
「嫌だ、馬鹿、やめろ……っ、あんた、最低だ、このクズ…っ!」
あらん限りの罵倒が口から漏れた。海堂は奏多の初めての男で、セックスに関する何もかもをこの男に教わった。けれど、奏多もあの店で働き、それなりに知ったふうを気取っていた。彼に再会するまでは。
「好きなだけ罵れよ。お前だって、俺がどんなに会いたかったか、知らないだろ」
「っ─」
掴まれた肩と腕にぎゅっと力が入る。痛みを覚えるほどのそれは、奏多の身体に甘い感覚として伝わっていった。
「俺は戻ってきた。だから、お前も俺から逃げるな」
「先に逃げたのはあんただろうが!」
「ああ、悪かった。どんな償いでもする。それが嫌なら、ちゃんと俺を拒絶しろよ。口だけじゃなくて、身体でも」
「んっ……!」
衣服の中に手を入れられ、肌をまさぐられてびくりと身体が跳ねる。まるで発熱した時のようにぴりぴりと過敏になっている身体は、ほんの少し触れられただけでも甘く熔けた。
(あ、あ、やばい)
頭の中もぼうっとしていく。瞳も勝手に潤んで、のぞき込んでくる彼の像を滲ませた。
「奏多─、可愛いよ」
「ん、ン─…」
唇を塞がれてしまい、甘い呻きが漏れる。たったそれだけで、腰の奥がきゅううっと切なく引き攣れた。そしてやや性急に彼の舌が這入ってきた時、覚えのある、閉じた瞼の裏がちかちかと瞬くような感覚。
「ん、ぁ─、ン」
身体中の力が抜けていく。どんなに意地を張っていても、悔しいことに奏多の躾けられた肉体はこの男の愛撫に蕩けていくのだ。