立ち読みコーナー
目次
258ページ
愛しているとは限らない    7
幸せであれ          233
あとがき           253
36ページ~
「いいぞ。上の口と違ってこっちは正直だな」
揶揄され、自分の後ろがいかに柔らかくほぐれて斑目を待ち望んでいるのか自覚させられた。指は二本に増やされているが、それだけでは足りない。
「……愉しい、ですか……?」
「ああ、これからもっと愉しくなるぞ」
「ぅ……っ」
両手で尻を揉みしだきながら、指を出し入れされる。熱い吐息が漏れるたびに窓が曇り、熱に浮かされながら湯月はそれを瞳に映していた。眼下に広がる夜景に、靄がかかる。
自分の息遣いと同じリズムで曇っては晴れ曇っては晴れ─それを視界の隅に捉えながら、気持ちは斑目の指の動きに集中していた。
「いい眺めだ」
それが景色のことなのか、自分が虐げている愛人のことを言っているのか、湯月にはわからなかった。ただ、斑目が上機嫌なのは確かだ。今日は、時間をたっぷりかけて抱かれるだろう。そのサディスティックな嗜好が、湯月を追いつめる。
「どうだ、湯月。お願いしたら、俺をここでしゃぶらせてやってもいいぞ」
「……っく、……ッふ!」
躰は限界なのに素直に求めたくなくて、湯月は唇を噛んだ。何もかもこの男の思いどおりに運ぶのは面白くない。同時に、こんなふうに焦らされて煽られることに快感を覚えているのも事実だった。
焦らされるほどに、快感は大きくなっていく。
「強情だな」
答えない湯月に斑目は嗤い、手を止めてズブロッカをショットグラスに注ぐとそれを一気に呷った。先ほどから次々と胃に流し込んでいるが、少しも酔っていない。
「お前も飲むか?」
「俺は……結構、ですよ……、……ぐ……っ」
そう言うが、斑目は再びショットグラスに酒を注いでそれを呷った。それを、口移しで飲まされる。胃が焼けた。
愛撫による熱なのか酒による熱なのか、もうわからない。ただどうしようもなく熱くて、躰に火を注がれたようだ。外ではない。内側から自分を焼かれているような気分だ。
内側に籠もる熱をなんとか放出して楽になりたいが、それを許してくれる相手ではなかった。今日は機嫌がいいだけに、そう簡単に許してもらえない。
「あぁ、……はぁ……ッ、……ん……、……ぁ……」
「お前が苦悶する顔は、そそるよ。いつも澄ました顔をしてるだけにな」
「……ッ、……ッは! ─ぁあっ! ……ぅん……、……ぁあ……ぁ」
また斑目がショットグラスを呷った。そして、口移し。
同じペースで飲まされ、目眩がしてくる。早く欲しいのに、焦らされたまま火を体内に注がれるばかりで、ますます状況は悪くなっていった。このままでは、自分が本当に発火しそうだと本気で思った。
体内にはそれほどの熱が籠もっている。
「……早く、……くだ、さ……っ」
自分からは決して求めるまいと思っていたが、限界だった。取り繕う余裕などない。
「なんだ?聞こえないぞ」
「……っく、……早く……、あなたを……」
言いかけて、これ以上言葉にならなかった。羞恥かプライドなのか、今さらなぜ躊躇するのかわからない。
「そんなんじゃあ駄目だ。もっと可愛くねだらないとこうだぞ」
「ひぅ……っ! ……ぁあ……ぅ……、……ッふ、……ぅう……ん」
指が三本に増やされた。両手で尻を強く揉まれながら奥を探られる。くぐもった声が唇の間から次々に溢れた。斑目の意のままに歌わされている。
「んあぁぁ……、……ぁあ……、お願い、しま……」
「なんだ?聞こえないぞ」
「早く、……早く、……突っ込んで、くださいよ……っ」
「さぁ、どうするかな」