立ち読みコーナー
目次
250ページ
楽園の疵     7
被虐       227
あとがき     244
87ページ~
「ふふ……、兄ちゃんの中、あったかい」
中で指をうごめかせながら、涼夜はささやく。
「柔らかくて……、こんな中に突っ込んだら、気持ちいいだろうなぁ……?」
「な、ぁ……に、……っ……!」
健太は下肢を跳ねさせた。するとくわえ込んだものが抉るようにうごめき、妙な感覚が迫りあがってくる。振りほどこうとしても涼夜の手は離れずに、恐怖を感じるほどに力強く健太の体を押さえつけている。
「……あ、あ……あ!」
「ああ、ここ?」
いきなり全身を、雷のような衝撃が貫く。びくびくと健太は反応して、大きく目を見開いた。目の縁からは、温かい涙が流れ落ちていく。
「ここが、前立腺なんだ?触られたら、男が絶対に感じちゃうところ」
「や、や……あ、あ……、っ……」
体が震える。指先までがわななく。自分の体が自分のものではなくなったような感覚があって、涙が次から次へと溢れてくる。それが耳に流れ込む不快な感覚を味わいながら、それでも涼夜の与えてくる愉悦からは逃れようがなくて。健太は悲鳴をあげた。
「いぁ、ああ……あ、あ……、……!」
「その調子だよ、兄ちゃん」
愉しげな口調で、涼夜が言った。
「声出して……どうせ、誰も聞いてない」
はっ、とした。家に、両親はいない。見慣れたリビングの天井を見あげながらの健太の喘ぎを聞く者はいない。しかし涼夜が聞いているではないか。笑いを含んだ吐息をつきながら、健太の体をもてあそぶ涼夜の耳に届いているではないか。
「や、ぁ……だ……っ……!」
身を捩って、健太はわめいた。
「こ、んなの……いや……だ、っ!」
「兄ちゃん、言うことと反応、全然違うのわかってる?」
呆れたような、悦ぶような調子で涼夜が言った。
「ここ、じゅくじゅくだよ?俺の指……二本くわえてんの、わかってる?」
「な、ぁ……、っ……」
淫らな涼夜のもの言いに、はっとした。腰を捩ってみてもよくわからない─けれど、そこに目を注いでいる涼夜が言うのだ、間違いはないのだろう。自分は今、男に指を突き込まれて喘いでいる─後孔をひくひくさせて、女のような喘ぎ声をあげているのだ。
「このまま、三本いけそう……もっと呑み込んで、開いて、ひぃひぃ言ってみる?」
「いや、や……、ぁ……っ……!」
ぐちゅ、ぐちゅ、と音が響く。全身を走る快感が鋭くなる。それは健太の目の前を真っ白に塗り潰し、ちかちかと星を散らせ─あ、という甲高い声とともに、健太は何度目になるかわからない欲を吐いた。
「あ、あ……は、……、っ……っ……」
「兄ちゃん、すっごくかわいい」
ぺちゃ、とあがったのは、舌なめずりの音だろうか。
「早く突っ込みたい……我慢できねぇんだけど、いい?」
「な、にが……、っ……ああ、あ!」
内臓を引きずられる感覚があって、指が引き抜かれた。くちゃくちゃと音がするのは、涼夜がローションを足している音だと思った。今なら逃げられる─はずなのに、健太の体は動かなかった。指先にまで流れ込んでいる、ひりつくような快感─立て続けに、無理やり追いあげられた絶頂は健太の体からすべてを奪っていて、ただぼんやりと目の前の靄を見つめていることしかできなかった。
「兄ちゃん」
甘く絡む声で、涼夜がささやいた。彼は体を起こし、健太の両脚を掴んでいる。健太は彼の体を挟む格好になっていて、開かれた後孔には明らかに指ではない、なにかぬるついたものが押し当てられている。
「……兄ちゃん」
縋りつくような声で、涼夜は言う。見あげた彼の表情は、好物を与えられた犬のような─そのような考えが浮かんだのはなぜなのだろうか。彼は熱い吐息を吐いて、そして腰を突きあげてきた。