立ち読みコーナー
目次
258ページ
恋のついでに御曹司     7
あとがき          254
161ページ~
「可愛いですよ」
甘い声で囁いてやると、笙真の頬と耳がふわっと赤く色づいた。きれいな色になった耳朶に触れてみたいという衝動が生まれる。だがここで耳朶なんかに触って、笙真がもっと可愛らしい反応なんかした日には、それだけで衝動がおさまるとは思えなかった。ここは地下室で、ドアは閉まっていて、二人きりだ。他の男性使用人が来るかもしれないが、いまは、二人だけの空間だった。マズい。
「森下さん」
敷いた畳の上で、笙真が正座した。なんだ、いきなりなにがはじまった?
「あの、俺がさっき言ったこと、マジだから。その……俺は実家には帰らないって言ったこと。向こうには森下さんがいないから、って」
「ああ、はい」
笙真はすごく恥ずかしそうに、もじもじと膝の上で両手の指を絡めた。
「俺、森下さんがいたから、ここに来た。森下さんが励ましてくれたから、勉強もマナー講習もめげずに頑張れたんだ。いつも見守ってくれて、すごく感謝してる。森下さんにとっては仕事だったかもしれないけど、そばにいてくれて、俺は─」
「いまはもう、仕事だけじゃないですから」
言っておかなくてはならないタイミングというものがある。いままさに、それが来た。森下は逃してなるものかと、笙真の正面に正座した。そして指遊びをしていた白い手を握る。
「最初は確かに仕事でした。笙真様の専属になりましたから。でも途中から、仕事だけじゃなくなって、笙真様のそばにいたいと思いはじめていました。いまでは、あなたとこうしている時間を仕事だなんて思っていません」
「そうなの?」
「そうなんです。笙真様が地元に帰るのではなくて、ただお母様と食事に行くだけと聞いて、心からホッとしています。離れたくありません」
「森下さん……」
潤んだ黒い瞳に歓喜が満ちる。その瞳に吸いこまれるようにして、森下は顔を近づけた。
もう自制できそうにない。
「あっ………」
握った手を引き寄せて距離を縮め、森下は笙真の唇にキスをした。触れるだけのキスに、笙真の体が一瞬でふにゃんと力をなくしてしまう。急いで抱きしめて、腕の中に取りこみ、さらに深いキスをした。笙真の唇を舌で割り、熱い口腔内を舐めまくる。
「ん、ん、んっ」
可愛らしい鼻声が、森下の衝動をさらにかきたてた。薄っぺらい舌を探り当てて自分のものと絡める。ぬるぬるとしごくようにすると、笙真はますます体を蕩けさせてもたれかかってきた。
「あ、ん、ん、森下、さ……っ」
 拙い動きで、笙真が股間を森下の膝にこすりつけるようにしてきた。柔らかなジャージ生地を内側から盛り上げるものがあり、笙真はもどかしげに腰を動かしている。森下はその膨らみを布地の上から撫でてやった。
「あ、ひっ……!」
びくんと背筋を震わせて、笙真の顔が真っ赤になる。食べてしまいたいくらいに可愛い。
「そんなふうに、しないで……。イッちゃう……」
「キスだけで、こんなになってしまったんですか?」
「だ、だって、森下さん……上手いんだもん……」
「私のせいですか」
「……ううん、俺が、えっちだから……」
笙真が小さく「ごめん」と呟くものだから、森下も恥ずかしながら一気に勃起してしまった。すごい威力を秘めた「ごめん」だった。
「あれ……森下さんも……?」
「はい、勃ってしまいました」