立ち読みコーナー
目次
290ページ
楽園暮らしはどうですか?    7
楽園にもすれ違いはある     237
あとがき               282
162ページ~
「キスしていい?」
「……っ、いいですけど、きかないで」
ください、まで言わせてもらえなかった。
唇が触れた。甘く食まれた。下唇。上唇。彼の唇で愛撫される。うっとりするほど心地いい。
(……うん)
自分の結論は間違っていなかったと確信した。
市川が好きだ。彼とするキスが好きだ。彼が、自分とキスをしながらしあわせそうな顔をしてくれるのがうれしい。これが間違っているというのなら、そんな常識や倫理観クソ食らえと思った。
開いた唇から覗いた舌が、そろりと唇を舐めていく。口腔の粘膜との際を舌先でたどられると、思わず声が漏れた。
「ふ……っ、んぅ、」
無意識に市川の肩を突っぱねる─つもりだったが、実際はすがりついたようなものだ。息をつくために開いた唇から市川の舌が入ってくる。
「んっ……、」
「智行、手」
(手……?)
ちょうだい、と言われて差し出した右手に指がからむ。もう片方の手で朝霞を抱き込み、くすぐるように背を撫でながら、市川はさらにキスを深くした。
「ん、ん……っ、……っ」
甘いソフトクリームを舌で掬って舐め融かすように、舌の表面を擦り合わされる。上顎の歯列の裏、舌の裏筋……舐められるたびに、からだも心もとろとろに融けていく気がする。
「うれしい……ずっとこうしたかった」
キスの合間、耳朶を噛むようにして囁かれた。
好きだよと直接耳に注ぎ込まれる。しあわせで気持ちよくてたまらないのに、締めつけられるように胸が痛かった。「せつない」って、こういうときも言うんだろうか。
引き寄せるように、市川の首に腕を回した。頬に触れる吐息から、彼がちょっと笑ったのがわかる。再び合わせた唇から彼の舌がすべり込んだ。
ゆったりとしたスローなキスの中、口蓋の奥を探られた瞬間に、朝霞はからだを震わせた。
「ん、んぅ、んーっ」
やわい粘膜を舌先で撫でられるとたまらない快感が走る。こんな─こんなキスがあるなんて。
(信じられない)
市川の、本気の手管に翻弄される。今度こそ彼の肩を突っぱねて、離れてくれと懇願した。
「どうした?」
深い快感をたたえた声で、市川がきく。わかっているだろうに、きかないでほしい。朝霞は快感でうるんだ目でちょっと睨んだ。
「……気持ちよかった?」
するりと彼の手が股間に触れる。隠しようもなくかたちを変えたそこは、撫でられただけでひくりと震えた。きっと彼の指にも伝わってしまっただろう。羞恥にぎゅっと目を瞑ると、目尻から一つ涙がこぼれた。
「……智行、それやばいよ」
「は……、なんです……?」
「エロすぎる」
「バカ!」
ぼやいた彼の胸を叩くと、彼はまた少し笑った。
朝霞の耳に唇を寄せ、
「このままじゃつらいだろ?もうちょっとだけする?」