立ち読みコーナー
目次
314ページ
性悪人誑しに男前わんこが溺れています     7
Best Partner           273
あとがき                   309
206ページ~
 今度のキスはやさしくて、丹念に時間をかけた心のこもったものだった。まるでとろ火で炙(あぶ)られるみたいなキスに、野江の身体もテンポを合わせてゆっくりと高まっていく。
「ん……ん、あ……っ」
「気持ちいい?」
「んっ、ん……い、いいよっ……」
 お互いに向き合って、野江はベッドに背をつけ、千林はこちらにかぶさってくる姿勢でいる。いつの間にかボトムと下着は膝上あたりまでずらされていて、彼の視野には剥き出しの野江の股間が映っているはずだった。
「じゃあ、こうしても?」
「あ、んあ……っ」
 だけど、いまは恥ずかしがる余裕がない。千林が先のところをいじりながら、もう片方の手で性器のつけ根にある丸い膨らみを手のひらに収めたからだ。
 敏感な先端をいたぶられつつ、重みを増した根元のそれを弄ばれる。知らず涙目になる野江の様子を千林はじっと見ていて「可愛いね……」と微笑むから、こういうときのこのひとはちょっとSっ気があるんじゃないかといまさら気づく。
「か、可愛いくな……っ、あ、ん……っ」
 くびれのところを強く擦られ、背筋がびくっと跳ねあがる。
 自分でするときとはまったく違い、どこをどうされるかが前もってわからないし、なによりも緩急つけた千林の仕草が巧みで、あっという間に野江は高みに持っていかれる。
「せっ、千林さんっ」
「なぁに、奏太くん?」
 こんなときにこんなにも甘い調子で聞いてくるのはずるいと思う。そのうえ、さきほどよりも擦る動きがゆっくりになっていて、そうなればいきおいで「そこ、もっと……っ」とせがむことへのためらいがなくなった。
「もっと、なに?」
「だから、そこを」
「どこ?」
 言わせる気かと恨めしく彼を睨み、それでもその先をうながすような彼のまなざしに負けてしまう。
「その……俺の、を……あなたの手で擦ってほしいっ」
 半ばやけくそでそう言うと、彼が唇を重ねてくる。
「ふ……む、ぅん……っ」
 舌で舌を舐められて、濡れた性器を巧みな指で扱かれる。
「ん、んんっ、は、ふ……ぅっ」
 千林はピッチをあげて、もういい加減限界を迎えそうな快感を煽り続け、そうしてそのあいだも蕩けるようなキスをやめない。
 せわしなく洩れ出る呼気も、口腔内に溜まる唾液も飲みこまれ、やがて野江は目を晦ませながら彼の手で快感の極まりを越えていった。
「ん、んんー……っ」
 ぶるっと震え、もはやこらえようもなく軸の先にあるちいさな孔からどろりとした体液が飛び出していく。その直前、股間をなにかで覆われたようだったが、そのときはわからない。溢れ出る快感をすべて放ってしまってからそれがタオルと気がついた。
「あ、はぁ……っ、は」
 いまだおさまらない呼吸に肩を上下させ、野江がくったりしていると、彼が身体の中心を丁寧に拭ってくれる。
「あ、んっ……」
 射精後で敏感になっている先端をタオルが擦っていったとき、鼻に抜ける声が出て、カアッと頬が熱くなる。いまさらだろうが、切羽詰まった感覚が去ったのちには、恥ずかしさが倍増しでやってくるのだ。
 赤い顔で上目に眺める千林は、平静な顔つきで、なにを考えているのかは読み取れない。彼は野江の股間を拭って綺麗にすると、元のとおりに下着とスウェットのボトムを引きあげ、そのあとでタオルを手に立ちあがった。
「……千林さん」
「ん?」
「その……えっと、用意がいいね」
 惑いに揺れるまなざしで、彼の手元を見ながら言った。本当に話したいのはそれではなかった気がするが、いまは適切な言葉が見つけられなかった。
「言ったろう、このあとの必需品になるからと」