立ち読みコーナー
目次
258ページ
愛していいとは云ってない    7
あとがき            249
29ページ~
「何が不満なんだ? え?」
「何って……、全部、です、よ……っ、……ッあ!」
「俺を愛してるんだろう? ここが、そう言ってる」
 自信満々な言葉を否定できないのが、情けなかった。
 溢れる先走りを拭われ、後ろに手を伸ばされて斑目を幾度となく咥えたそこはすぐに熱くなった。自分の躰とは思えないほど、本人の意思とは裏腹に斑目を欲しがっている。
 はしたない躰を恨めしく思うが、どうにもならない。
「ぁう……っ、ぅ……っく、……ッふ!」
 指が、ゆっくりと体内に入ってくる。自分がどんなふうに躰を拓かされるのか、しっかりと味わえと言わんばかりだ。そんな斑目のサディスティックなやり方に、取り繕う余裕すらなくなっていく。
「いいぞ。お前のその表情は、見ていて気分がいい」
「はぁ……あ……ぁ、……ぁ……」
 斑目の闇のような視線を感じながら、自分がその中に深く引き摺り込まれていくのを感じた。どんなにもがいても、ひとたび囚われると二度と這い上がれない。絡みつく視線は、まるで実態を伴っているかのように、湯月の肌を撫で回す。
 見られるだけでこれほど熱くなるのは、相手が斑目の時だけだ。
 セックスの時はもちろん、カクテルを作る時も、いつもこの瞳に煽られる。ぞくぞくと全身をわななかせてしまう。
「……ぁ……あ……っく、……俺を……っ、こんなところで、抱く……くらいなら……、美園さんって人の……ところに……」
「今から行ったら、お前が困るんじゃないか、湯月」
「あ!」
 当たらずも遠からずといったところだ。ここで放り出されたら、洒落にならない。
「はぁ……っ、……ぁ……あ……ぁ……、……」
 手をつく場所がなくて、また鍵盤に触れた。
 ポロロン。
 零れる音が、湯月を深みに連れていく。
「お前のせいで出た損失の穴埋めに、俺が奔走してるんだぞ。少しは愉しませろ」
 斑目が余裕の態度でスラックスの前をくつろげ、下着の中から屹立を取り出した。焦らすようなゆっくりとした一連の動作に、躰は限界だった。
 空腹の獣が、目の前に餌を見せられているのと同じだ。匂いを嗅がされ、見せつけられるだけ見せつけられる。ようやくそれにかぶりつくことを許されても、行儀よく食べろと命令される。自分の意のまま欲を満たすことなど、決して許されない。
「誰も……頼んで……っ、——ぁあ……っ!」
 あてがわれ、湯月は思わず目を閉じた。
「俺が負けるところが見たいんだろう?」
 一気に貫こうとはせず、徐々に引き裂く斑目のやり方に全身が震える。下半身が疼いてたまらない。早く欲しいのに、くれない。ひどい男だと思いながら、その相手を欲しがってしまう自分が腹立たしくもあった。
「そ……です、ね……、……あ、……ぁあ……っ!」
 そんな日はもう来ないと言いたげに深々と挿入され、湯月は尻で斑目を味わうことを堪能せずにはいられなかった。
 けれども、斑目はすぐには動こうとはしない。挿入したあとは視線を注ぐだけで湯月の反応を眺めて愉しんでいる。舌先をチラリと見せながら舌なめずりする斑目は、まるで悪魔のようだった。