立ち読みコーナー
目次
480ページ
ダークホースの罠
CHAPTER1    007
CHAPTER2    069
CHAPTER3    139
CHAPTER4    239
CHAPTER5    325
CHAPTER6    395
あとがき      481
232ページ~
「っ」
 冷たいカミルの手に直接触れられた胡桃は小さく身体を震わせる。カミルは慌てて「すまない」と詫びたものの、胡桃自身を離そうとはしなかった。
「よく冷たいと言われるのだ。我々は人間より体温が低いらしくてな」
「っ…離せ…っ」
「胡桃のがすごく熱くなってるから…、…余計に冷たく感じるかもしれない」
「じゃなくて…っ…」
 離せと胡桃が険相で繰り返しても、カミルはまったく従うつもりはないようだった。わざと無視しているというより、目の前の快楽に夢中になっているように見え、胡桃は途方に暮れる。
 このまま…カミルの好きにされてしまうのは……まずい。絶対にまずいと強く思い、大きく息を吸ったのだが…。
「っ…」
 再び覆い被さってきたカミルに唇を塞がれ、胡桃は声が出せなくなる。情熱的に口づけられると同時に、握り込まれたものを扱かれるとたまらない快感が全身を走り抜ける。
 セックスで得られる快楽に夢中になったのは、もう随分前のことだ。恋人も長くいないし、欲しいとも思わなかった。結婚を諦めた時から、異性に対する興味も失っていた。こうして誰かと口づけるのだって、いつ以来なのか、覚えもない。
「…っ…」
 だから、余計に身体をコントロールできないのだと思い、自分を慰めてみたものの、言い訳にはならない気がした。身動きが取れないとはいえ、こんなふうに一方的な行為で感じてしまうなんて。なんて浅ましいのかと自分を恥じると共に、カミルに弄られているものが昂ぶりを増してきているのを感じて、先を想像する。
 カミルは…何を求めているのだろう。このまま、自分をいかせることが…目的なのだろうか。それで満足するのか? 
 …いやいや。
「……」
 男の「満足」がどこにあるのかを考えた胡桃は、絶望的な気分になった。もしもカミルに犯されてしまったら…。恐ろしい想像を浮かべ、顔を青ざめさせて名前を呼ぶ。
「…っ…カミルっ…!」
「なんだ?」
「ま…ってくれ…。俺は…無理だ…」
 尻を貸すような真似は絶対に無理だと、必死な目線で訴える胡桃に、カミルは不思議そうに首を傾げる。
「胡桃は朝生と違って大人だから、いいんだろう?」
「っ…ちが…」
 そういうことじゃないと、続けようとした胡桃の唇を、カミルは淫らな口づけで塞ぐ。カミルから与えられる快楽を望んでいるかのように、素直に受け入れる身体が憎かったが、胡桃にはどうにもできなかった。
 どうして自分の身体は動かないのか。これもヴァンパイアだというカミルの能力のせいなのだろうか。
「…っ…ふ…」
 身動きが取れない理由を考えていた胡桃は、カミルが服を脱いでいる様子なのに気づいた。怪訝に思って眉を顰めると、口づけが解かれる。視界に映ったカミルはいつの間にか裸になっており、胡桃の身体を跨いで腹の上に座る。
「…胡桃」
 カミルはしなだれかかるように胡桃の上半身に覆い被さり、耳元で名前を呼ぶ。甘い声は蠱惑的な響きで胡桃の本能を誑かす。カミルの身体は白く、しなやかで、美しかった。服を着ているより、裸でいた方が綺麗だ。そんなことを胡桃に思わせるほどの身体は、同時に、ありえないはずの欲望を唆す。
「……」
 自分を見るカミルの目にも、胡桃は惑わされていた。泣いているわけでもないのに、濡れているような瞳は、黒曜石のようにきらきらと輝いている。カミルの瞳に引き込まれそうになる錯覚と共に、彼から目が離せないでいた胡桃は、次の瞬間、思いがけない感触を得た。
「っ…」
 カミルの口づけと愛撫によって形を変えていたものが、柔らかな内壁に包まれる。えっと驚いた胡桃が視線を移動させると、カミルが彼の孔で自分自身を飲み込もうとしているのがわかった。
 少しずつ、カミルは自ら腰を落として、胡桃のものを収めていく。根本まですべて含んでしまうと、満足げに息を吐いた。
「っ…はあ…っ」