立ち読みコーナー
目次
266ページ
そんなん仕事しとるんやろが!   7
そんなん惚れてしまうやろが!   247
あとがき             260
164ページ3行目~166ページ13行目
 そういえば知っとるか、と隣で缶ビールを手にした針間が千鳥のほうに向き直る。
「地元の話になるんやけど、梅田の阪神百貨店な、あっこにはタイガースショップがあんねん。ガキのときに、そこでユニフォームとおんなじ柄のシマシマパジャマを買うてもろうて、ものごっつううれしかったんおぼえとるわ。大人ものも売っとるから、そのうち着たろかと思うんやけど、どうやろう?」
 クールな感じの美貌を持ち、スタイリッシュな外見のこの男がシマシマパジャマ。想像したら、なんだか微笑ましい気分になった。
「それもいいと思いますよ。今度着てみせてください」
 頬を緩ませてなにげなくそう言うと、針間の表情がふっと変わった。
「俺はええけど、パジャマやで」
 含みを持たせた彼の言葉。艶めかしい流し目に、千鳥の身体ががちんと固まる。
「あ……その」
「なあ千鳥」
 針間がおもむろに缶ビールをテーブルに置く。
「俺はジブンにつきあってくれって言うたな? あの返事はどうなってん」
 思わず千鳥が目を泳がせると、そのさまをしばらく眺めて、針間がハアッとため息をつく。
「そうやって、ためらっとる様子やからゴリ押しはせえへんけどな」
 言って、針間が隣の場所から立ちあがる。そうしてソファのところにあったスーツの上着を手に取るから、千鳥はおろおろして腰を浮かせた。
「あの……」
 怒らせたのかと思ったが、彼は違うと首を振る。
「怒ってへん。千鳥がこのことを真面目に考えとるぶんだけ、慎重になっとんのはわかっとる。せやけどムラムラしてもうたから、今晩は帰るわな」
 このままおったら、押し倒してしまいそうや。
 冗談の調子だが、針間の目は不穏な感じに光っていた。
「ほな、また明日」
 口の端だけで軽く笑って、針間が玄関に足を進める。千鳥もふらふらと彼の背中を追いかけた。
「針間さん……」
「すみませんて、言うたらあかんで」
 千鳥の発言を先取りして針間が告げる。と、いきなり目の前の広い背中が反転した。
「……っ!?」
 あっと思う暇もなく、針間に抱き締められ、キスされていた。
 ぬるりと舌が入りこみ、それでくまなく口腔内を探られる。針間の右手は千鳥の腰、左手は背中にある。
 きつい抱擁と、激しいキス。前のときより少しばかり乱暴なのは、はっきりしない千鳥に苛立っているからだろうか? 
「ん……っ、く……ふ、ぅ……っ」
 舌を吸い出され、相手の口中に誘われて、強く激しく吸いあげられる。洩れる吐息も、唾液も、なにもかも奪われてしまうような熱の高いキスだった。
「ふ……ん、ぅっ……ふ……」
「千鳥」
 唇を離してから、針間があらためて千鳥の身体を抱き締める。背中が反るほどぎゅっと締めつけ、そうしてゆっくり腕を離した。
「……ほんまにあかんわ。なんでこんなに千鳥のことやと辛抱が利かんのやろ」