立ち読みコーナー
目次
274ページ
破廉恥なランプ     7
あとがき        272
「お前の口から『ジュース』なんていやらしい言葉が飛び出すなんてな」
「それは、イシュタルさんが……変なことばかり、教えようとするから」
『ジュース』は匡が勝手に見た夢でイシュタルとは関係ないが、こうでも言わなければどんなことになるかわからない。イシュタルさんごめんなさい……、と心の中で謝罪しながら、キファーフの尋問からなんとか逃れようとする。
「あいつは、愛欲を満たすのが得意だからな。——襲われるなよ」
「お、俺なんてまさか……、それより……キファーフさんのほうが」
 言いかけて、口を噤んだ。変なことを口走るところだった。
「あ、いえ……」
「俺のほうが、なんだ? 言ってみろ」
 優しく問いつめられて視線を逸らそうとするが、吸い寄せられるように見つめ返してしまう。そして、いともあっさりと白状してしまうのだ。
「あの……、……その……、狙われてるじゃないですか」
「なんだ。やっぱりやきもち焼いてんのか?」
「だって……」
 イシュタルの美しさは、尋常ではない。男だとか女だとか、そんなものを超越している。自分のような平凡極まりない男よりも、キファーフと釣り合っているとも思う。しかも、高飛車な態度は取るが、根は素直で真っすぐだ。だからこそ、サラマとも上手くやっている。
「俺が惚れてんのはお前だよ、匡」
 心臓が大きく跳ねた。
 俺が惚れているのはお前——特別飾り立てた言葉ではないが、ストレートに表現される気持ちは、どんな言葉よりも心を射貫く。そして、たまらなく欲しくなるのだ。
「どうした? グッときたのか?」
自分の色香を十分に自覚しているキファーフは、匡があと一押しで落ちるとわかっているようだ。
「いいだろう? お望み通り、お前のココナッツジュースを搾ってやる」
 軽くふざけた口調で言ったかと思うと、キファーフは布団の中へ消えた。
「キファーフさん……っ、……ぁ……っ」