立ち読みコーナー
目次
226ページ
恋の叶う魔道具       7
あとがき          215
79ページ~
「魔道具、本物かもな」
「えっっ?」
 思いがけない一言に、幸久は目を見開いて高瀬を見上げた。視線が絡み、コクンと喉を鳴らす。
 再び高瀬の手が伸びてくるのがわかり、ビクリと肩に力が入った。
 どうしてだろう。身体が……動かない。避けたほうがいいのではないかと頭の隅で囁く声が聞こえるのに、逃げられない。
 先ほどと同じように幸久の頬を両手で挟み込んだ高瀬は、幸久が初めて目にする表情でこちらを凝視していた。
 ここにあるはずのない、不思議なモノを観察しているみたいな眼差しだ。
「おまえって、こんな顔……してたか? なんつーか、マジですげーかわいいんだけど。おまえのことをベタベタ触ってた、酔っ払いのセクハラ変態オヤジの気分が、今ならわかるっていうか……さ」
「は……あ? 慶士郎さん、なに言ってんのっ?」
 高瀬の口から出たとんでもないセリフに、唖然と目を見開いて言い返す。
 マジでかわいい? 
 子供扱いしてからかおうという魂胆か、軽い調子で「カワイーな」と言われたことは何度かあったけれど、今の高瀬はなんだか……これまでと違う空気を纏っている。
 冗談めかして笑っていながら、こちらを見る目が真面目な光を浮かべているような気がして、幸久は笑みを引っ込めた。
 全身に纏う空気が、いつもと違う。高瀬が見知らぬ大人の男に見えて、戸惑いが増すばかりだ。
「自分でも、オカシイってか……ヤバいだろって思うんだけどなぁ」
 高瀬は、両手で幸久の頬を包んだまま端整な顔に苦笑を滲ませる。その表情は言葉で形容し難いくらい優しくて、心臓が変に鼓動を速めた。
 ドキドキ……する。耳の奥で、自分の心臓の音が響いて、うるさいくらいだ。
「か、からかうにもほどがある。あんまり悪趣味なコトするなら、おれだって、本気で怒るからな……っ」
 きっと、またからかわれているだけだ。幸久が本気にしたら、「お子様だな」と笑うのかもしれない。
 トクトクと胸を高鳴らせる自分に、そんなふうに予防線を引いて唇を引き結んだ。
 下手くそな作り笑いを浮かべたであろう幸久を、高瀬はジッと見続けている。
「俺、真面目に語ってんだけどなぁ。信じてもらえないのは、日ごろの行いのせいか。本気で、おまえがかわいい……っつーか、エロエロに見えて……どうしようか?」