立ち読みコーナー
目次
242ページ
「ちょっ……、外せよっ!」
「戻ってきたら外したげるよ。――俺がいないあいだ、ひとりで愉しんだりできないようにね」
「な……っ」
「それくらい大丈夫だろ? たった十分も我慢できねーの? どうしても自分で抜きたい?」
「……っ」
 ふだんは従順な下僕面をしてなんでも言うことを聞くくせに、セックスのときだけは、津森はたまに意地悪になる。
「すぐに帰ってくるから、いい子で待ってて」
 彼はジャケットを羽織ると、動けない葵生の唇に軽く口づけて、部屋を出ていった。
「じゃあ、行ってきます」
 為す術もなくその背中を見送って、葵生は深く湿ったため息をついた。
(言うんじゃなかった……かも)
 たかが十分。でもそれがとてつもなく長く思える。
(いや、でも)
 やっぱりゴムなしでするのだけはいやだった。どうしても。だったら、待っているしかない。
「はあ……」
 奥がずきずきする。なんと言っても、もう挿入寸前だったのだ。すっかり身体はできあがってしまっている。
 じっとしていようと思ってもはしたなく腰がうねり、浮き上がる。後孔が勝手に何度も開閉しているのがわかる。楔を欲しがって、引き絞る。
「……っ……」
 掛け時計を見上げれば、まだ津森が出ていってから、さほど時間はたっていない。
(まだ、五分……)
 近所のドラッグストアに着いた頃だろうか。
「……津森……」
 はやく、中を埋めて欲しい。
「あ……はぁ……っう」
 何もしていなくても息が乱れ、喘ぎ声が零れた。柵とネクタイとが擦れて、ぎちぎちと音を立てる。
(……七分)
 多分、縛られた腕は、無理に外そうとすれば外れる。手が自由になれば、自分でイくことができる。でも、もしそれをすれば、
 ――我慢できなかったんだ? はしたないな
(そんなことを言われたら)
 津森の声を想像した途端、ぞくりと背が震えた。茎を先走りの蜜がつうっと流れていくのまでわかって、恥ずかしくてならない。けれどそのことにさえ感じた。
(ああ……はやく……っ)