立ち読みコーナー
目次
258ページ
隣人はチャイムを二度鳴らす     7
あとがき              255
161ページ~
「ちゃんと勃ってんな。嬉しいよ」
「静夏さ……」
「口でしてやる」
「あ、待ってくだ……、——ぁ……っ!」
 いきなり口に含まれ、喉の奥で声を噛んだ。熱いものに包まれ、一気に理性が吹き飛びそうになる。恥ずかしさと、快感との狭間で、坂梨は翻弄された。溺れきってしまえば楽なのに、かろうじて残る理性がそれを邪魔する。
 それでも巧みに動く舌は、先端のくびれをなぞり、坂梨から少しずつ理性という名の呪縛を奪い取っていく。
 青柳は、上手かった。
 下半身が熱された飴のように溶け出してしまうのではないかと勘違いするほど、熱くて、蕩けて、たまらなかった。呑み込みきれない快感が多すぎる。溢れてしまう。声が漏れるのをどうにかしようと、手の甲を唇に押しつけるが、それもほとんど意味をなさない。
 膝が震え、すぐに限界が迫ってきた。奉仕させるだけさせて、自分はまだ何もしていないのにと思うが、無言で愛撫を続ける青柳に限界はすぐにやってくる。
「……あの……っ、……待……っ、……待って……、………ぁ、……はぁっ、……ぁあ……っ!」
 堪えきれず、坂梨は下腹部を震わせて白濁を放った。男は初めてだという相手の口に射精してしまい、慌てて謝罪する。
「……す、すみま……せ……」
 言い終わらないうちに、青柳はゴクリと喉を鳴らした。
(嘘……)
 あっさりと呑み込んだことが信じられず、凝視してしまう。
「何が『すみません』だ。アホウ。あんたに悪さしてんのは、俺だ」
 愉しげに唇を親指の腹で拭った青柳は、口許を緩めた。嫌じゃないのだろうか——そんな疑問を、たったそれだけで払拭してくれる。
「あんたの味だ」
「ぅん……っ」
 口づけられ、舌先で唇を刺激されたかと思うと容赦なく口内を舐め回された。
(にが……)
 自分の味だ。青柳が呑み込んだ、白濁の味。
 独特の匂に加え、喉の奥に微かに絡みつくような苦みが残る。
「ぅん……、……んぁ……、……ん、……んんっ、……ぁ……あ、……ふ」
 自分の味を確かめろとばかりに、舌を絡ませて濃厚に口づけられた。己の中の欲望を直視させられるようなキスに、戸惑いを覚える。男同士の行為に慣れているのは自分のほうなのに、リードされっぱなしだ。しかも、先にイッてしまった。
 堪えきれなかったことが、恥ずかしくてたまらない。
 シャツを脱ぎ捨てる気配に目を開けると、もろ肌脱いだ青柳の肉体が目に飛び込んでくる。
 美しかった。まるで、芸術品のような肉体だった。男の躰にこれほど見入ってしまうものだろうかと思うほど、バランスの取れた肉体。
「どうした?」
「いえ……別に……」
「俺のカラダがエロいんだろう? もっと見ていいぞ」
 言いながら、ベッドの横にある引き出しに手を伸ばし、中をごそごそ探った。捜し物がすぐ見つからないらしく、取り出したものを次々と放っていく。
「確か、ワセリンが……、あった」
 手に握られたプラスチックのケースを見て、本当に最後までする気なのだと今さらながらに思った。本当にいいのかと言葉で確かめたくなるが、そうするまでもなく下着ごとスラックスを剥ぎ取られて、さらに右膝を肩に担がれてしまう。
「あ、あの……っ」
「ここ使うんだろ?」