立ち読みコーナー
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 ドクンと音を立てて、説明のつかないものがアンリの体の中を荒れ狂う。
 馬鹿な―――。
 彼の色香に囚われ、引き摺り込まれそうになる。そこから抜け出そうとアンリは慌てて身を起こそうとした。だが、それもクリストフの逞しい腕に阻止される。
「今さら逃げるというのか?」
 腰を掴まれ、引き戻された。
「くっ……」
 今まで感じたことのない感覚に怖くなる。このまま自分がどんな醜態を晒してしまうのか恐ろしくてクリストフの顔がまともに見えなかった。
「男が初めてなら、大人しくされるがままにしていろ。素直に感じていればいい」
「クリストフッ…」
「そんな可愛い顔をするな。お前を大切に抱けなくなる」
 再びクリストフの熱く濡れた鋭い視線とぶつかる。彼が欲情していることが窺い知れた。そして自分も彼に対して欲情している。
 クリストフの目が獲物を定めたように細められる。彼の目の前に晒されたアンリのそれは、恥ずかしくも既に頭を擡げ始めていた。
「んっ…」
「声を殺すな…」
 絶対的な命令と共に、彼の唇がアンリの下半身に触れるか触れないかのキスを落とす。
「お前がどんな顔をして乱れるのか、ずっと知りたかった。どんな姿で女を抱いているのかも興味があった」
 この男が自分をそんなに気にしていたとは気づかなかった。アンリは彼をライバルと思っていたにしても、彼は実はアンリのことをさほど目に入れてないような気がしていたのだ。
 クリストフの自分に対する執着をアンリは初めて知らされる。だが、どうしてかそれを心浮き立つような思いで感じてしまう自分がいるのを否定できない。
「クリストフ…」
 アンリの声に誘われるようにクリストフの手が優しくアンリの下半身を扱きだす。
「はあっ…」
 熱が一点へと集中する。渦巻くような熱い液体がクリストフの行為によって、濁流となって体中に溢れ返った。
「やっ…」
 アンリが体を捩ると、クリストフの手が一瞬離れる。快感の波を鎮めようと大きく息を吐いた途端、ねっとりとした生温かいものがアンリの下半身を再び覆った。
「だめだっ…クリストフッ!……あああっ…」
 抗いの声など一切無視される。彼の舌や歯が器用にアンリを攻め立てたと思えば、口腔内の奥深くに取り込まれる。
 アンリは己の下半身に頭を埋めるクリストフを押し退けようと、彼の肩を押し返した。だがそのしっかりとした筋肉に包まれた肩は、女性のものと違い、甘美な痺れに侵されたアンリの力では容易に動かすことができなかった。
「はあっ…ああっ…」
 一気に快楽の渦が勢いを増す。クリストフは歯と舌と喉を巧みに使いアンリを快楽の淵へと追い立てる。鈴口にチロチロと舌を差し込まれ、アンリは何度も達きそうになるのを堪えた。こんな溢れ出すような快感をアンリは知らない。
「クリストフ、放し…て…出る、出るからっ…はあっ…うぅ…」
 もう喘ぎ声を気にしている場合ではなかった。女性相手では得られなかった壮絶な痺れに翻弄されるしかない。
「あっ…はあっ…」

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